『私を通りすぎたマドンナたち』、佐々淳行著、文春文庫、2018年。

長く官界・政界にいらした著者(1930年生まれ)による女性月旦です。

おもに政治家たちがあつかわれましたが、ジャーナリストや芸能人のかたがたも含まれていました。

全7章。

章によって評価の高低が異なります。

第6章においては、小池百合子氏(1952年生まれ)あるいは蓮舫氏(1967年生まれ)に対し、手厳しい指摘がなされました。

両者が失速する前に書かれた文章ですから、著者は先見の明をおもちと想像します。

わたしが最も心を動かされたのは、第2章「私が出会った勇気溢れる女性たち」です。

とくに国連で活躍された緒方貞子氏(1927年生まれ)の話題は圧巻でした。

20世紀末、イラク軍から無差別攻撃を受け、トルコとの国境に逃れた40万人のイラク系クルド人たちは、

トルコ政府が入国を認めなかったために国境地帯にとどまるわけだが、それゆえイラク国内の国内避難民になってしまった。
その当時、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、越境した難民は保護していたのだが、国内にとどまった国内避難民は保護できなかった。これに対し、緒方さんは人道的視点から、彼らも保護・支援することを決断するのである。(pp.83)

日本にこれほど豪胆な人物がいらっしゃることを誇らしく思います。

著者は緒方氏のありかたを「ノーブレス・オブリージュ(高い地位に伴う義務と責任)(pp.81)」の語で説明されました。

まさにそうなのでしょう。

同章では他にも尊敬すべき女性たちが多数登場しました。

たとえば、金美齢氏(1934年生まれ)および大宅映子氏(1941年生まれ)。

大宅氏は「親・台湾」の由で、

自民党でも宗旨替えして北京詣でする議員が雪崩(なだれ)を打つような時代にあって、彼女はブレなかった。外務省時代に台湾に留学したりして非常にお世話になったにもかかわらず、日中国交正常化以降、さっさと親中国に乗り換えた加藤紘一氏などとはまったく対照的だった。(中略)
彼女は「自分の姿勢は親台湾、台湾派である」と旗幟(きし)鮮明にした上で、ふらふらする政治家や日本政府の姿勢などに、ジャーナリストとしてかなり厳しい発言をして、台湾独立運動に援護射撃をしていたのだ。(中略)
勇気をもって意見を主張し、ブレることのなかった金美齢氏、大宅映子氏はまがうかたなき信念のあるマドンナ、女傑であった。(pp.121)

頭が下がります。

わたしは本書を通し、お名前だけ知っており、人柄や実績を知らなかった諸氏に関して、くわしく学ぶことができました。

有益な読書でした。

しかし、佐々氏は、対象とする人物のお顔立ちについて言及しすぎです。

「彼女は颯爽としていて、きれいだからVIPルームでもたいへんに目立っていた。美人の誉れ高い彼女から(後略)(pp.224)」どうのこうの……。

不必要な記述であり、著者はその方面の思慮が欠落しているかたなのではないか、と感じました。

金原俊輔