『ルポ 漂流する民主主義』、真鍋弘樹著、集英社新書、2018年。

2018年の昨今、ポピュリズム政党の台頭、他民族排斥意識の増悪、自国ファースト主義の蔓延などが、世界各地で目立つようになっています。

日本とて例外ではありません。

それに伴い、前述の流れを許すこととなった「民主主義」の限界も、一部で論じられだしました。

本書は、アメリカ、イギリス、オーストリア、スペイン、日本、の5カ国で取材し、国民たちの実態および意見を集約し紹介したものです。

その青年はまくしたてた。今までに何度もトランプの集会に足を運んだことがあるといい、帽子には直筆のサインが書かれていた。
「そのわけは、移民が俺たちから仕事を奪ったからだ。不法移民たちはしかも、多くの犯罪まで引き起こしている。シカゴを見ろ。ウィスコンシンだってだんだんヤバくなってきた。みんな、怒っているんだ」
その中でも特に中流が怒っている、と青年は言う。(pp.93)

以上は、すでにテレビのニュースで観たり、国際問題を語る本で読んだり、なんだか既視感がある一節でした。

実際、欧米を筆頭にこうした状況が定着してきているのでしょう。

メディアが当該状況を報道しつづけた結果、報道にたびたび接したわれわれは既視感をおぼえてしまうわけです。

そのような人々の声が反映される民主主義。

心配です。

類似した時勢のもと、民主主義の枠組みのなかで、アドルフ・ヒトラー(1889~1945)がドイツの総統に就任した史実を想起せざるを得ませんでした。

では、どうすれば良いのかというと、残念ながらわたし程度の者には名案がなく、本書でも模範解答は示されていません。

せいぜい言える浅薄な私見は、わたしたちは、それでも民主主義を死守すべき、ということです。

現在、これに代わる良策はない、と思料しますので。

民主主義を信じ、民主主義にすがる。

このときの「信じかた」「すがりかた」に、ひと工夫、ふた工夫、が必要とされているのではないでしょうか。

『漂流する民主主義』は終盤、各国で顕著になってきた不穏な動きを「警報」とみなし、

トランプの支持者たちを蔑視し、糾弾すること。英国のEU離脱に賛成した英国民たちをとがめ、非難すること。それは、鳴り始めた「警報ベル」に、うるさい、耳障りだと文句を言っているようなものなのかもしれない。今、必要なのは、火元に目を向けることなのにもかかわらず。(pp.171)

こうまとめました。

たぶん、先刻、数知れない政治家や識者らが「火元」に目を向け、「消火」をめざし奮闘努力なさっているはずですが。

金原俊輔