『なぜ崎陽軒のシウマイは冷たいのに売れるのか?:Think different 30 売れ続けるヒット商品を読み解く』、中山マコト著、みらいパブリッシング、2019年。

アップル・コンピュータの社是である「Think different=他とは違うことを考えようよ!(pp.23)」をキーワードとしつつ、日本国内で他社と異なる発想をして成功にいたった諸企業を展望した本です。

大きな会社から小さな会社までが網羅されました。

冒頭であつかわれたのは、書名にも出てくる横浜の崎陽軒。

シウマイ弁当が人気の由です。

ふつう、旅行者たちは冷たくなってしまった駅弁を食するものの、これはどうしてもホカホカだったときより味が落ちています。

ところが、崎陽軒のシウマイ弁当は別らしく、著者の中山氏は、

食べてみると、「あれ? すごくおいしい!」と言うか「冷めたシウマイのネガティヴな要素がまったくないじゃん!」と驚きました。(pp.28)

こう感じたそうです。

おいしい理由は、同軒が駅弁の宿命を打破するご工夫をおこなったから。

工夫とは「うまみ成分の権化(pp.29)」である「ホタテ・エキス」の使用でした。

創業者だった久保久行氏が、試行錯誤の結果、たどりつかれたものです。

「冷たくてもおいしいシウマイを創ろう! 旅を今まで以上に楽しんでもらおう!」という圧倒的な「サービス精神」です。これこそが「冷めてもなお、おいしいシウマイ」を創り出したのです。ホタテ貝のおかげで、私たちは今日もおいしいお弁当にありつけるわけです。(pp.32)

冷たくなって風味が悪くなるような状態を「仕方ない」「どうにもできない」とあきらめず、考え、取り組み、模索し、あげく「仕方ない」「どうにもできない」を見事に乗り越えたわけです。

シウマイ弁当のごはんも独自の炊きかたをなさっているそうで、醤油入れ容器すらひとひねり、崎陽軒が体質的に有している創意工夫の精神に頭が下がります。

その甲斐あって、

1日に2万3000個、日本一売れるお弁当(後略)。(pp.28)

となりました。

『なぜ崎陽軒のシウマイは~』においては、こうした、ビジネスに関わる者が参考とすべきエピソードがつぎつぎに登場してきます。

今度は「近大マグロ」の項を見てみましょう。

有り余るほどの予算を集められる大学はなく、数多くの研究テーマに等しく予算を配分しても成果が得られるとは限りません。
そこで近畿大学はマグロ養殖に絞り込みました。(中略)
養殖に成功したマグロを「近大マグロ」として打ち出し、商品化を進めるとともに、東京新橋や大阪梅田にも近大マグロを食べられる飲食店をオープンさせました。
これらの施策により、近大マグロの知名度は一気に向上します。当然ながら、近大の名前も響き渡ります(後略)。(pp.84)

かつて大学人だったわたしには近畿大学のご英断ぶりがよく理解できます(マグロに絞り込む際、教授会では超ど級の嵐が吹き荒れたはず)。

ご英断の賜物として、めでたく大学の知名度が高まり、志願者数も増加しました。

これまた頭が下がる思いです。

以上、わたしは本書を読むことで刺激され、「よーし、自分もがんばろう、工夫して仕事しよう」的な気もちにいたりました。

著者に感謝します。

金原俊輔