『ルポ「断絶」の日韓:なぜここまで分り合えないのか』、牧野愛博著、朝日新書、2019年。

2019年。

日本政府は、韓国へのフッ化水素など先端素材3品目の輸出に規制をかけ、つづいて、貿易上の優遇措置が適用される「ホワイト国」リストから同国を外す旨の決定をしました。

以上の結果、かの国における「反日感情」がぐんぐん強まっている状況です。

日本では政府の措置に大賛成する国民が少なくありません。

経済産業省が募集した「パブリック・コメント」やNHK世論調査の結果がそれを示しています。

インターネットを覘(のぞ)けば、日本ネット民が書いた韓国および韓国人への「ヘイト・スピーチ」も散見されるありさまです。

日韓の緊張がどこまでもつづく様相を呈しだしているといえます。

わたしには、日本側が冷徹にくだした判断を、韓国のほうは感情だけで受け止めているのではないかと思われ、こうしたなか、わが国は先方の感情に巻き込まれない悠揚迫らぬ態度を見せ、維持してほしいと願っています。

あちらでの「日本製品ボイコット」の類(たぐい)にも動じずに……。

ところで、わたしは最近、古書店「ほんだらけ」で買った、

牧野愛博著『ルポ 絶望の韓国』、文春新書(2017年)

を読み、各種の新知識を得ました。

日韓に横たわる諸問題を正確に見通すために再度牧野氏の知識に頼りたいと考え、本書『ルポ「断絶」の日韓』をもとめた次第です。

副題「なぜここまで分り合えないのか」は、まさに自分が理解したい事柄でしたし。

氏は韓国に関して突っ込んだ記事を書くジャーナリストでいらっしゃり、

大統領府はこの一連のいきさつを隠し、私の報道を「事実無根だ」と言って騒いだ。(中略)
その後も、大統領府の「事実無根」「爪先ほども事実のない報道」など、罵詈雑言(ばりぞうごん)に近いコメントが続いた。(pp.179)

こうしたご経験すらされたそうです。

そのうえ、2018年には「大統領府への無期限立ち入り禁止(pp.180)」処分を受けてしまわれた由。

こんな人物がお書きになった本ですから、構成がしっかりしていました。

細かなエピソードを積み重ね、多数のインタビューも含んだ、上出来な政治ノンフィクションです。

たとえば、現在の韓国外相・康京和氏について。

康は就任に先立って6月7日に行われた国会人事聴聞会で、外交政策について不明確な答弁を繰り返した。実際に住んでいない場所を居住地として届け出る「偽装転入」などの不祥事も発覚した。(中略)
売り物は通訳や長年の国連生活で培った流暢な英語だったが、「英語だけしかない」と揶揄(やゆ)された。康も自身のセールスポイントのアピールに躍起になるあまり、記者団にも公開される外交行事の冒頭場面で、通訳がいるにもかかわらず、やたらに英語を連発。記者団から「韓国の大臣なんだから韓国語を使って」とクレームがついた。(pp.198)

おもしろい逸話でした。

いっぽう、わたしは読了後も依然として「なぜ分り合えないのか」を把握はできず、今年出版された書物なのに「時代遅れ」な面も感じます。

後者の例。

日韓関係の悪化を懸念しているのは日本人だけではない。韓国の知人たちは「文在寅政権の対日政策と、一般の韓国人の日本観は全く違う」「大勢の韓国人が日本へ行く。日本が嫌いな韓国人はいない」と口をそろえる。(pp.266)

聞いたことはあります。

けれども、引用は往時を語る文章となりました。

日本と韓国の仲が急激な勢いで悪化しており、それがまだ止まっていないためです。

上梓したばかりなのに、早くも内容が古くなってしまった。

たぶん牧野氏にかぎらず、いま、日韓関係を解説したすべての本の著者たちが味わっておられる悲哀なのでしょう。

金原俊輔