『韓国、ウソの代償:沈みゆく隣人と日本の選択』、高橋洋一著、扶桑社新書、2019年。

わたしはここ1週間ばかり、韓国がらみの本を立てつづけに読みました。

日韓関係が「史上最悪」とまでいわれている昨日今日、これは、わたしだけに限らないのではないでしょうか。

読んだのは上掲書に加え、

峯岸博著『日韓の断層』、日経プレミアシリーズ(2019年)

崔碩栄著『韓国「反日フェイク」の病理学』、小学館新書(2019年)

の2冊です。

韓国のみをあつかった書物ではないものの、日韓情勢にかなり多くの紙数を割いている、

櫻井よしこ著『問答無用』、新潮社(2019年)

にも目をとおしました。

うち、今回のコラムで『韓国、ウソの~』を取りあげる理由は、本書出版が最も現在に近く、その結果、2019年7月の日本政府による先端素材3品目の輸出規制、同年8月の「韓国ホワイト国」除外、規制や除外に反発した韓国側の「ボイコット・ジャパン」運動、さらには2019年7月に起こったサッカー選手クリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス所属)の韓国戦での出場拒否など、ほやほやの話題がいくつも含まれていたからです。

わたしは高橋氏(1955年生まれ)の作品を読むのは初めてで、書店でたくさんの著書をお見かけしてはいましたが、帯にご自身の写真を載せておられる場合が多く、何がなし「軽い人なのだろう」と敬遠していました。

読んでみたところ、理知的でいらっしゃり、諸事象を教養とデータに基づき冷静に分析なさっています。

敬服しました。

経済学や政策研究がご専門みたいです。

3品目の輸出規制およびホワイト国除外への氏の見解は、

今回の対抗措置は2、3カ月程度は有効かもしれないが、他国から買ってきたり、内製化していくことで済むかもしれないから長期的に見れば意味がないとも考えられる。
だから、こうした話を聞いて両手を挙げて喜ぶ人たちは、ものすごく非現実的と言わざるを得ない。あくまで短期的な措置でしかないのだ。(pp.69)

きっとそうなのでしょう。

地に足のついたコメントでした。

つづいて、「在日韓国人が反日活動をしている」旨の風評に関し、

民主主義国家なら、言論の自由はどこにでもある。だから韓国人が反日的な発言をしていても、それ自体を取り締まることはできない。
もしスパイ活動のようなことを指すなら、スパイ活動防止法を作ればいい。そうすれば、スパイ活動をすればすぐに強制送還できる。そういう話ならわかる。(pp.92)

正論と思います。

韓国・文政権による最低賃金の大幅引き上げにたいしては、

最低賃金を上げさえすれば国内経済が回るというのは全くの間違いだ。
むしろ賃金は景気の最後にくる。そういうと「労働者は後回しか」という批判が起こるのはわかっているが、その通りとしか言いようがない。労働者は後回しにしなければならないのだ。少なくとも最低賃金においては労働者を優先しては絶対にダメ。左派の人間にはそういう当たり前のことがわかっていないらしい。(pp.142)

一刀両断でした。

わたしはページを繰るつど啓発されてゆきました。

それでは、気になるロナウド選手の不出場騒ぎの件は、どうだったでしょうか。

高橋氏は2002年の「日韓ワールドカップ」に原因をもとめ、

韓国による審判員買収のひどさは試合を見ればわかる。(中略)
だから欧州諸国は、もう韓国とはサッカーの試合をしたくないと思っている。ただ、韓国は世界からそう思われていることを自覚していない。そういう意味で、韓国は100年分の損をした。
一方の日本はフェアプレーを貫いて良かった。結果として、日本は欧州勢とも試合を組めるし、今や韓国よりも強くなったという見方が多い。(pp.200)

このご指摘は変です。

ユヴェントス(イタリア)はサッカーの親善試合で韓国を訪問していた、つまり韓国は「試合を組め」たのだし、ロナウド選手以外の欧州人選手たちは試合に出たわけですので、ロナウドだけがプレーを拒絶した状況の説明として成立していません。

もしロナウドが韓国チームとの試合に出場していたら、2002年の日韓ワールドカップのときの海外スター選手たちと同様に、ケガをしていた可能性もあったと思っている。(pp.203)

可能性はあったでしょうけれど、そういう可能性はチーム全員におよんでいたと推察することができ、やはり核心をつく説明にはなっていません。

著者は以前「サッカーをしていた(pp.200)」らしく、そのためサッカーの話を交えたいお気もちはわかります。

わたしも読みたかったですし……。

とはいえ、せっかく理詰めの本を執筆されたのですから、話題をスポーツにまで広げて論理性を弱めたりしなかったほうが良かったのではないか、と感じました。

金原俊輔