『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』、増田俊也著、新潮社、2011年。

不世出の柔道家・木村政彦の生涯が700ページにわたって書きこまれている本です。

プロレスラーの力道山との異種格闘技戦が主題です。

ふたりは1954年(昭和29年)、全国のファンが見まもるなか、リングの上で対決しました。

その勝敗は多くの人が知るところです。

同書には、木村や力道山のほか、相撲の東富士、空手の大山倍達、合気道の塩田剛三、そして柔道関係者たちが、つぎつぎに登場してきます。

かなり男くさい本です。

木村という人物は驚異的に強かったようで、若いころに道場やぶりをして40~50名を倒し、ブラジルでグレイシー柔術と闘っては圧勝しました。

その強さに到達するまでの鍛錬ぶりもすごく、たとえば彼は200キロのバーベルでベンチプレスを数百回できたそうです。

また、毎晩寝る前に腕立てふせを1000回おこなっていたとのことです。

『木村政彦は~』では、それほどの怪力を誇った木村が腕相撲で小柄な塩田に負けた逸話も紹介されています。

しばらく合気道を学んでいたわたしにはうれしいエピソードでした。

最も感動したのは、登場人物たちのだれもが奥様がたから愛されていた、「生まれ変わるとしたら、もう一度あの人と結婚します」といわれていた、というくだりです。

人間離れをした猛者たちが家庭では妻思いのやさしい夫だったのだろうと想像し、あたたかい気持ちになりました。

金原俊輔