『「超」進学校 開成・灘の卒業生:その教育は仕事に活きるか』、濱中淳子著、ちくま新書、2016年。

開成と灘はいうまでもなく日本トップレベルの私立中高一貫校です。

上掲書は、その2校を出た人たちを対象に実態調査・意識調査を実施し、統計的手法を駆使しながら結果の分析をおこなったものです。

著者(1974年生まれ)は東京大学そして東京大学大学院で教育学を学ばれました。
現在のご専攻は教育社会学とのことです。

『「超」進学校~』は、そのように優秀でいらっしゃるかたの学識がじゅうぶんに反映された、良書だと思います。

とはいえ、心理学者であるわたしには、読了後、物足りなさが残りました。

その理由は、まず第一に、難易度がとても高い学校に入って卒業した人たちの「知能」が語られていなかったからです。
本書の中で「認知能力」という言葉は何度か登場します。
しかし、これが(心理学が用いる語である)知能のことなのか、それとも他の諸能力も含んだ表現なのか、ちゃんとした説明がなされていませんでした。
知能が高ければ進学校の教育内容に関わりなく本人の人生が発展する場合があり得るわけで、その可能性についての吟味が欠けていたと感じられます。

第二に、書中、成績の良さや知能の高さに付随しがちなある種の「発達障害」のことも言及されていませんでした。
開成および灘の「卒業生たちと仕事」を研究する本書においては必須だったでしょう。
わたしは、卒業生のどなたもが発達障害を有しているとは考えませんし、発達障害が良くないといっているわけでもありません。
ただ、卒業生たちの「リーダーシップ」「人間関係の壁」などを検討するこの本においては、影響を与えているかもしれない要因のひとつとして発達障害を想定してみるべきでした。

以上、物足りなかった理由を二つ述べましたが、本書が力作であるという評価に変わりはありません。

金原俊輔