『あかんやつら:東映京都撮影所血風録』、春日太一著、文春文庫、2016年。

東映京都撮影所で映画製作に携わった人々を紹介したノンフィクションです。

役者、スタッフ、管理職、だれもが憑かれたように仕事に没頭する様子が活き活きと描かれています。
わたしは「映画の撮影現場は熱気につつまれている」という話を聞いたことはありましたが、本書を読むと、まさにその通りの状況でした。

稲荷祭の日は、朝から撮影所で酒を飲むことの許される完全な無礼講の日だった。荒くれの男たちは酔いが回るにつれて、あちこちで喧嘩を始める。監督とカメラマン、進行と大道具・・・・みんな取っ組み合い、殴り合った。〔中略〕それでまた翌日からノーサイドで現場を共にするのである。(pp.152)

熱気もここまでくれば、とうてい職場の話とは思えなくなります。

そのような職場だった関係で荒っぽい男たちを吸い寄せたせいか、『あかんやつら』にはラグビー経験者たちが多数登場します。
元ラガーマンのわたしには嬉しいことでした。

こういうエピソードがあります。

高校・大学とラグビー部で鳴らしていた高岩は、休憩時間に撮影所の空き地で一人でラグビーボールを蹴っていた。
「おい、俺にもやらせろ」
そこに現れたのは岡田茂だった。岡田は、高校では柔道部のキャプテンだったが冬はラグビー部を手伝っていたというのだ。二人でボールを蹴り合っていると、今度はマキノ光雄がやってくる。
「俺にも蹴らせい」
光雄は、同志社中学時代にラグビーをやっていたと自称した。
「あんなもん。弟のラグビーはインチキや」
マキノ雅弘もこれに参加する。
雅弘は、京都一商で九番スクラムハーフを務めた本格派だった。こうして、気づいたらみんなでミニゲームをするようになっていったという。(pp.397)

入社したくなりました。

本書は東映の社史を記述したものでもあり、1950年代の草創期から2013年ごろまでの流れがくわしく語られています。

同社は長いあいだ「時代劇そして任侠の映画をつくる会社」でした。
数々の名作を発表したそうです。

しかし、わたしは時代劇・任侠のどちらにも興味がないため、東映の映画を鑑賞した記憶がありません。

子ども時代にアニメーション『わんわん忠臣蔵』(1963年封切)を観て、これには深く感動させられました。
いまでも主題歌を口ずさむことができるほどです。

忠臣蔵ですから、動物アニメとはいえ時代劇なわけで、東映の社風を裏切らない作品でした。

金原俊輔