『この自伝・評伝がすごい!』、成毛眞著、KADOKAWA、2017年。

著者(1955年生まれ)は、元・日本マイクロソフト社の社長でいらっしゃり、そののち投資コンサルティング会社を設立された、ずっとビジネスの世界でご活躍のかたです。

読書家としても知られ、わたしは、著者と同好の士たちが一緒になって2012年から2014年まで発行していた『ノンフィクションはこれを読め!』(中央公論新社)シリーズ3冊を愛読しました。

成毛氏はほかにもたくさんの単著を出版されています。

今回は上掲書でした。
イーロン・マスク、ビル・ゲイツ、ラマヌジャン、田中角栄、徳川綱吉、横井小楠など、全20名の人物の自伝や評伝を対象にした書評です。

博学のうえ文章も巧みな同氏ですので、この書評自体が(あつかわれた人物たちへの)独立した評伝になっているかのような感じでした。

本書においてわたしが最もおもしろく受けとめたのは「平和力 リチャード・ニクソン」の章です。

アメリカ合衆国第37代大統領だったリチャード・ニクソン氏(1913~1994)のことは、もちろんおぼえています。

わたしのなかで今に残る印象は「ウォーターゲート事件を起こした悪い大統領」的なものでした。

しかし、著者は明石和康著『大統領でたどるアメリカの歴史』、岩波ジュニア新書(2012年)を読み、他の読書を通じて得られた知識も交えながら、

今、アメリカがたどりついた「最も信頼のおける大統領」がリチャード・ニクソンなのだ。アメリカでは、2017年がニクソン復権元年になるといわれている。トランプが間違えば間違うほど、このニクソン待望論は高まっていくはずであろう。(pp.161)

と、お書きになっています。
最新の知見かつ独自の視点です(待望論に関する解説は少し根拠薄弱と感じました。とはいえ「目からうろこ」の興味深い言説でした)。

幾多の書籍による情報を自家薬籠中のものとなさっている成毛氏。

『この自伝・評伝が~』内で氏が批評した自伝や評伝のうち、わたしが読んだことがある本は一冊たりとも含まれていませんでした。

非常にご多忙でいらっしゃると想像しますが、いったいどこで時間を見つけ、どうやって膨大な読書をなさっているのでしょうか?

書物への能動的なご姿勢に頭が下がります。
多くの人が学ぶべき態度と思いました。

最後にひとことつけ加えさせていただくと、わたしが尊敬しているアメリカの大統領は、第40代ロナルド・レーガン氏(1911~2004)です。

金原俊輔