『未来の年表:人口減少日本でこれから起きること』、河合雅司著、講談社現代新書、2017年。

おそろしい本でした。

日本の年間出生数は右肩下がりで減少しつづけていますが、21世紀に入ってから拍車がかかって毎年100万人ほどとなり、2016年、ついに100万人を割ってしまいました。

わたしは「出生数が97万7000人だった」旨を報じるニュースに接した際、恐怖をおぼえました。
わたしにかぎらず全国すべての大学関係者がゾッと震えたのではないでしょうか。
今後、この数少ない同年齢集団の中から大学入学者を獲得してゆかねばなりませんので。
大学の生き残りに関わる怖い問題です。

しかし、上掲書を読み、人口の減少によって発生する問題は大学の生き残りどころではなかった事実を知りました。

社会を痛撃する異変がつぎつぎ出来(しゅったい)してくるみたいです。

同書によると、たとえば、

2018年、地方国立大学の経営が傾く

2019年、日本の技術大国としての地位が揺らぐ

2021年、多数の介護離職が生じる

2030年、デパート・銀行・高齢者施設などが小さな都市から消える

2033年、家屋3戸に1戸が空き家になる

……国内あちこちの領域がきしみだします。

さらに、2040年を迎えるころ自治体の半数が消滅の危機にひんし、2042年には高齢者数が4000万人を超え、2050年に入ったら世界規模の食料争奪戦に巻きこまれる、由でした。

2065年、無人化した離島を外国人が占拠する事態すらあるとのこと。

河合氏(1963年生まれ)は以上をまとめ「静かなる有事」と呼んでいらっしゃいます。

わたしは、人口減が要因で起こり得る諸般の国難について頭がまわらなかった自分を恥じ、心底『未来の年表』を読んでよかったと思いました。

日本の将来を見据えるために重要な本です。
ベストセラーになってほしいと願います。

ひとつだけ、本書への要求を述べさせてください。

著者は少子化が国におよぼす影響を検討しながら、今後毎年100万人前後となる同一年齢集団に関し、この人たちの精神性を検討事項に加えておられませんでした。

彼ら彼女らは、父母の世代・祖父母の世代よりも、おそらく「欲求不満耐性が低い(つまりストレスに弱い)」のではないかという問題です。

もし本当に欲求不満耐性が低ければ、これからいっそう高校・大学の中退者が増え、新入社員の離職率が高まり、結婚・出産・育児を回避する若者たちが頻出するでしょう。

親の介護やボランティア活動も長続きしないかもしれません。

したがって著者が示してくださった深刻な未来は、実のところもっと深刻である可能性が考えられるのです。

この件をも含むと、本書は余計おそろしい内容になって、「2017年夏の怪談」怖さ第1位にノミネートされたのではないかと想像します。

金原俊輔