『「エイジノミクス」で日本は甦る:高齢社会の成長戦略』、吉川洋・八田達夫共編、NHK出版新書、2017年。

表題内にある「エイジノミクス」。

これは「高齢化」と「経済学」とを合わせた造語だそうです。

上掲書は高齢社会での日本の経済成長を検討した本でした。

高齢者の数が増えてゆくにともない、高齢者がおこなうビジネスも高齢者を対象としたビジネスも起こり得るため、工夫・努力しだいでわが国の経済力は落ちるどころか上昇する可能性がある、旨の内容です。

すでに大手企業が高齢者の領域に参入しているらしく、

ネスレ日本は神戸市と連携し、高齢者が集まる公共の場所にコーヒーメーカーを無料で置く。そうしておしゃべりする機会を増やし、実際にコーヒーを飲む人には一杯10円を払ってもらうという「介護予防カフェ」の事業を実施している。(pp.168)

また、資生堂は、

高齢者への化粧療法プログラム「いきいき美容教室」や介護、医療スタッフ向けの「ADL向上のための整容講座」を開催している。この講座では、高齢期のQOL(生活の質)には、外出や人との交流など、社会とのつながりがきわめて重要であること、そして、身だしなみや化粧を意識することが、「前向きな気持ち」や「出かけたくなる気持ち」になり、社会とつながりを維持する役割をもつことを解説する。(pp.169)

うねりが広がりつつある模様です。

そのほか、本のなかで、遠隔医療サービス、見守り装置、高齢者の旅行を支援するビジネス、シニア・フィットネス、シニア・ハローワーク、介護ロボットや高齢者向け自動運転車など、さまざまなビジネスがらみの話題が提供されました。

以上を実現させるために、編者たちは「日本ではまず起業文化の昂進(こうしん)が図られなくてはならない(pp.210)」とのご意見で、まったく同感です。

ビジネスに携わるかたがたは今後の巨大マーケットである高齢者層を見逃してはいけませんし、積極的な起業にもつなげていってほしいものです。

わたしの身近に実際そのような経営者がおられます。

なお、高齢者の増加により現7700万人である日本の生産年齢人口が減少してしまう件については、

50年後の生産年齢人口約4500万人という数字は、実は現在のフランス、イギリスの生産年齢人口よりは多い。この事実にも注目する必要がある。もし、50年後の日本は生産年齢人口が減り過ぎてイノベーションをやろうにもその担い手がいないと言うならば、フランスやイギリスはすでに現在イノベーションをやる力がないということになる。(pp.21)

このように「心配ない」という見通しでした。

わたしが以前本項で紹介した河合雅司著『未来の年表:人口減少日本でこれから起きること』、講談社現代新書(2017年)とは「正反対」の予測といえるでしょう。

素人にはどちらが正鵠を射ているのか判断できません。

『「エイジノミクス」で~』のほうが希望と安心感をあたえますので、わたしはこちらに一票を投じたくなりました(ちなみに、こういう心の動きを心理学では「認知的不協和の解消」と説明します)。

金原俊輔