『マインド・ザ・ギャップ!:日本とイギリスの「すきま」』、コリン・ジョイス著、NHK出版新書、2018年。

著者(1970年生まれ、男性)は、イギリス人ジャーナリスト。

上掲書ご執筆時にはイギリスに戻られていたのですが、かつて約20年間、日本に住んでいらっしゃいました。

タイトルの語句はロンドン市の地下鉄の駅で流れている「(電車とホームのあいだの)隙間にご注意を」という案内放送のセリフだそうで、ジョイス氏はこの言葉に沿いながら日本居住の体験をまとめられています。

ユーモアが漂うエッセイでした。

印象にのこった箇所全部を紹介するわけにはいかないものの、「日本には四季がある」項では、

日本には雨期(梅雨)があるではないか。ぼくがこう言うと、日本人は笑って答える。それは「夏の一部だ」、と。ぼくが思うに、梅雨はその前後の時期と天候がかなり(劇的なほど)ちがうし、数週間も続く。それはもう一種の季節だ。だからこうしよう。日本にはおもに四つの季節がある。(pp.40)

こんなことが書かれています。

わたしはアメリカ在住時代、たまたま「日本の四季」の話題になったときには、梅雨も加えて「五季がある」と説明していたので、嬉しい文章でした。

つぎの例。

日本で歩いていると、携帯画面を見ながらこちらにまっすぐ歩いてくる人を避けなくてはならないことがよくある。イギリスでもないことはないが、日本よりかなり珍しいだろう。こんなことをする日本人は叱ってやりたいところだが、かわりにぼくは坂本九の有名な歌のフレーズを口ずさむ(「上を向いて歩こう」)。残念ながら、この方法は効き目がない。画面を見ながら歩きまわるほど自分の世界にはまり込んでいる人は、歌詞に込められた控え目なヒントに気づかないのだ。(pp.142)

著者の身長は190センチだそうですから、スマホに熱中しすぎて大男の外国人にぶつかりそうになった人(たぶん若者)のうろたえぶりが目に浮かび、おかしくなります。

それにつけても『上を向いて歩こう』は諸外国において有名な曲です。

わたしがアメリカで楽団つきの豪華パーティに出席した折に、日本人の存在に気づいた楽団員の皆さまが同曲を演奏しだしてくださり、周囲のアメリカ人たちがそれに合わせてハミングした、ひと幕を思いだしました。

ほかでは、「助けて!電車オタクになりそう」や「『ゆるキャラ』への挑戦」の章も笑えます。

とにかく『マインド・ザ・ギャップ!』は楽しめる本でした。

しかし、けっして日本を褒めるだけではなく、欠点のご指摘もあります。

わたしは日本に関するエッセイ、

ヴィレム・カッテンディーケ著『長崎海軍伝習所の日々:日本滞在記抄』、平凡社(1964年)

ドナルド・キーン著『碧い眼の太郎冠者』、中公文庫(1976年)

ハインリヒ・シュリーマン著『シュリーマン旅行記:清国・日本』、講談社学術文庫(1998年)

などを読んだ際、記述されていた欠点の指摘を素直に受け入れました。

本書に対しても同様で、日本人として反省すべき点への気づきが促された思いになります。

良質の「日本論」に接すると、多くの人がそう感じるのではないでしょうか。

金原俊輔