『世界が感動する日本の「当たり前」』、マンリオ・カデロ著、小学館新書、2018年。

カデロ氏(1953年生まれ、男性)は、サンマリノ共和国の駐日大使。

サンマリノは、イタリア領土内にある、世界で5番目に小さい国だそうです。

氏の日本在住はすでに40数年におよんでおり、日本語もお話しになります。

上掲書は、日本社会・日本文化に精通されている著者が、西洋人の目をとおしてわが国の長所を語った、良質なエッセイでした。

昨今、日本人著者たちによる「日本自賛本、特定他国排斥本」がたくさん出回っている状況です。

わたしは、それらとは異なる視点で何らかの発見や指摘がなされているのではないかと期待し、『世界が~』を購入しました。

同書はわたしの期待に応えてくれたと感じています。

たとえば、日本茶のペットボトル。

著者によれば、

ずっと愛飲しているのですが、以前から不思議に思っていたことがありました。飲料会社の社名は英語やローマ字で大きく表記されているのですが、商品名については日本語でしか書かれていないのです。確かに社名はしっかりとわかりますが、外国人にとっては、何が入っているのかさっぱりわかりません。(pp.67)

カデロ氏がこのお気づきを「伊藤園」社へ伝えたところ、同社はさっそく『お~いお茶』などの容器に英語を加えた由でした。

つぎに、重たい話題となりますが「慰安婦問題」に関する2015年「日韓合意」のゆれ動き。

今回の日韓合意は実質的に破綻していると思いますので、次の展開に備えていくことが大切だと思います。何でも日本のせいにする文化を持つ、厄介なお隣さんには日本の常識が通じないと考えたほうがいいようです。(pp.163)

合意は「最終的かつ不可逆的だったはず」の一辺倒だったわたしは、このように諦観的な受けとめかたもあることを学びました。

参考となりました。

さらに、安全な日本では、

「店舗で椅子にかばんを置いても、盗まれない」ことも、世界からは驚きをもって受け止められることです。(中略)
かばんを置くだけではなく、テーブルにパソコンやスマートフォンを置いたままトイレに行ったりする光景をよく見ます。日本では物を置いて、目を離しても盗(と)られることはほとんどありません。日本では椅子に物が置かれていれば、「この席は人が確保している」という意味であり、それを盗もうということは考えられないのでしょう。
世界にはかばんを椅子に置いたままで、目を離してもあまり「盗まれない」ことが「当たり前」な国と、目を離した「瞬間に盗まれる」ことが「当たり前」の国があるのです。(pp.56)

これは定番の話題です。

著者ご自身も憂慮していらっしゃるように、こうした安全性がかえって海外における邦人旅行者の犯罪被害の遠因となっています。

「痛し痒(かゆ)し」でしょう。

最後のトピックになります。

著者はご旅行好きみたいで、

日本の文化・歴史を感じることができる場所としては、長崎や宮崎がお薦めです。長崎を訪ね歩けば、日本にある異国情緒を堪能でき、趣の異なる日本の姿を楽しむことができます。(pp.137)

ありがたいお言葉です。

とはいえ、長崎ときたら枕詞のように添えられがちな「異国情緒」。

わたしは長崎市民でありながら、市内どの界隈どの街路に異国情緒が漂っているのかをよく理解できていません。

むしろ佐世保市のほうに「米国情緒」があるような気がするのですが……。

金原俊輔