『日本人とドイツ人:比べてみたらどっちもどっち』、雨宮紫苑著、新潮新書、2018年。

わたしの場合、上記タイトルを見て思い浮かべるのは、

イザヤ・ベンダサン著『日本人とユダヤ人』、角川文庫(1972年)

です。

深遠な議論に感嘆した記憶があります。

そこで、つい『日本人とドイツ人』にも、高い期待をもってしまいました。

われわれ現代の日本人が聞知しておくべき容易ならぬ問題が濃密に論じられているのではないか……?

しかし、期待とは裏腹に、こちらのほうは「軽い読物」的な内容でした。

それはそれでかまいません。

雨宮氏(1991年生まれ)はお若く、イザヤ・ベンダサン氏じつは山本七平氏(1921~1991)のような偉才の向こうを張った雄編の執筆をめざしたわけではないでしょう。

さて、日本とドイツは、第二次世界大戦中に同盟を結んだあいだがら。

おまけに敗戦後、どちらの国も経済的な発展をとげました。

ドイツ人たちが、ある程度そういう日本を意識してくれているのかと思いきや、

ドイツに行ってみて、日本出身者のわたしへの反応はどうだったか。
正直、なんとも思われなかった。日本人だからチヤホヤしてくれる人も、日本を褒めちぎってくれる人もいない。(中略)
ドイツ人からすれば、日本は極東にある遠い国、アジアのわりにがんばっている国にすぎなかった。(pp.28)

だそうです。

まあ欧州人の実態はそんなところなのでしょう。

『日本人とドイツ人』では、日独両国をよく知っておられ比較することができる著者の、種々の気づきが書き連ねられ、

考えてみると、日本には「美しい風景を見られる場所」はあっても、「美しい街並み」というとあまりピンとこない。一部だけが美しくとも、背後に高層ビルが見えたり、一本となりの道に行くとゴミゴミした街並みが目に入ってしまう。クリーンではあるが、ビューティフルではない。(pp.55)

こうしたハッとするご指摘につながりました。

ご指摘は参考になりました。

ところが、なぜか読んでいる最中、ドイツへの興味もしくは敬意が起こったりはせず、また、さほど日本人としての反省や誇らしい感情も生じませんでした。

少々ものたりない作品でした。

ひょっとしたら、ドイツと日本というのは、比べてみても特別有意義な成果に到達する2国ではないのかもしれません……。

著者は本書冒頭で日本の観光地を語りながら、

個人的に一番のお気に入りは、歴史スポット満載&卓袱料理が絶品の長崎である。(pp.36)

以上のようにお書きになりました。

わたしが住む長崎市を賞賛するだけではなく、卓袱(しっぽく)料理のおいしさにまで言及してくださったのです。

嬉しいですし、感謝いたします。

金原俊輔