『フェイクニュース:新しい戦略的戦争兵器』、一田和樹著、角川新書、2018年。

世界中で脅威となっているフェイクニュースやサイバー攻撃を細見した本です。

フェイクニュースにたいしてもサイバー攻撃にたいしても手の打ちようがない状況みたいでした。

インターネットを悪用した各国政府の世論操作も詳述されており、上掲書によれば、ロシア、中国、フィリピン、カンボジア、などにおいて事態が深刻の由です。

わが国とて例外ではなく、フェイクニュース、サイバー攻撃、世論操作、以上に関連するさまざまな課題が紹介されました。

そのうちの「親学」と「江戸しぐさ」。

親学は科学的根拠がない子育て法で、江戸しぐさは歴史的事実に基づいていない価値観です。

こうした怪しげなものが日本の教育現場に取り入れられてしまったとのこと。

心配になります。

さて、わたしは和光大学で学んでいたころ社会心理学を専攻しており、デマや噂に関心をもっていました。

その方面の卒業論文を書くため書籍をあれこれ読み、明治時代に「(西南の役で亡くなったはずの)西郷隆盛がロシアで生きていた」旨のフェイクニュースが流布した事案などを、うっすらおぼえています。

当時はフェイクニュースなる言葉がなかったため、たしか「誤報」と記述されていました。

本書では、誤報的なフェイクニュースも話題に含まれていましたが、より問題視されていたのは単なる誤報ではなく、なんらかの良からぬ意図を有するフェイクニュースでした。

フェイクニュースとネット世論操作は、言論の自由や表現の自由といったデモクラシーの基本を侵食する仕掛けであり、ハイブリッド戦はその構造上、社会のリソースを戦時体制=敵対する国家を弱体化し傘下に収める目的に集中する。ハイブリッド戦に強くなることと、個々人の自由や多様性を尊重する価値観とは相容れない。(pp.100)

「ハイブリッド戦」とは、兵器を用いず、サイバー攻撃などでおこなう戦争を意味します。

重たいご指摘を引用させていただきました。

著者は書中、「偏向報道」や「情報遮断」にも触れていらっしゃいます。

内容豊富な一冊でした。

読後感をまとめます。

わたしは『フェイクニュース』という警告の書によって、われわれ現代人が天与のものと受けとめている自由意志だの自己決定権だの何かへの好悪だのが、他から、想像を超えるほど強い影響を受けてしまっている可能性を認識することができました。

対応策を語る力はありませんが、その可能性を自覚しておかなければ、影響を避けたり弱めたりする動きへはつながらないように思います。

金原俊輔