『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌」』、斉藤光政著、集英社文庫、2019年。

タイトル内の語は「つがる・そと・さんぐんし」と読みます。

古代、いまの青森県五所川原市および周辺に、中央の大和朝廷に匹敵する政権があったことを記した文献です。

和田喜八郎という人物が、1947年の夏、偶然ご自宅で発見したらしいです。

ずっと門外不出の秘密文献だったところ、1975年に青森県市浦村なる村の公史として刊行され、やがてアマチュア歴史研究家や古代史ファンを中心に全国へ浸透してゆきました。

しかし、文献は当初から「現代人による偽書の疑いあり(pp.14)」と囁かれていたのです。

真書であるのか、偽書なのか。

偽書だとしたら誰が何の目的で作成したのか。

以上にまつわる真書派・偽書派ふたつの陣営の長期的な攻防を追った書物が『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌」』でした。

新聞記者の斉藤氏(1959年生まれ)による良質のノンフィクションで、そのうえミステリーの趣も兼ね備えた作品です。

攻防がどう決着したかに関しては、ミステリーとして楽しみたい向きの邪魔をしたくないので、ここでは触れません。

決着は措き、書中、思わぬ著名人たちが登場してきました。

その件について書きます。

おひとりは民族学者の梅棹忠夫(1920~2010)。

わたしはかつて、梅棹氏が発表された、

『知的生産の技術』、岩波新書(1969年)

『文明の生態史観』、中公文庫(1974年)

などに接し、多大な知的刺激を受けました。

学問への姿勢も学びました。

もうおひとりは、推理作家の高木彬光(1920~1995)。

高木氏の、

『成吉思汗の秘密』、角川文庫(1973年)

これは名作です。

わたしは『成吉思汗~』を読んでいた際、あまりのおもしろさに打たれて「巻を措く能わず(かんをおくあたわず)」「一読三嘆」状態を実体験しました。

さらに、臨床心理学者の河合隼雄(1928~2007)も、すこしだけとはいえ出てきました。

最後の感想を述べさせていただきます。

それでは、わたし自身が『東日流外三郡誌』を知っていたかというと、30年ちかく前に(書名は失念しましたが)同誌の概要をまとめた読物に目をとおした記憶があります。

古代史に興味をもっていないわたしが、なぜその種の本を手にしたのか、もはやおぼえていません。

通読しつつ「胡散臭(うさんくさ)い……」と感じたことはおぼえています。

金原俊輔