最近読んだ本268
『ベストセラー伝説』、本橋信宏著、新潮新書、2019年。
著者は1956年生まれ。
わたしより1歳年下のかたです。
夕陽の向こうに消えていったベストセラーとそれをつくった先達を追ってみよう。(pp.6)
こんな「夕やけ番長」的セリフをニヒルに決めながら、往年のベストセラー諸作品を再発掘し、紹介してくださいました。
おもしろくないはずがありません。
まず、第1章で語られたのは『冒険王』そして『週刊少年チャンピオン』。
わたしは小学生だったときに近くの貸本屋さんで毎月『冒険王』を借りていました。
貝塚ひろし作画「ゼロ戦レッド」を記憶しています。
著者によれば『少年チャンピオン』が創刊されたのは1969年だった由。
わたしは14歳でした。
週刊誌にそれほど関心をもっていなかったため、同誌への深い思いはありません。
しかし、むろん「ブラック・ジャック」「がきデカ」「マカロニほうれん荘」などの名作は読みました。
なかでも、
小松左京作、さいとう・プロ画「日本沈没」
が好きで、これは単行本になってからも入手しました。
第5章、『平凡パンチ』と『週刊プレイボーイ』。
なつかしい。
週刊プレイボーイの好調ぶりに対し、若者文化を牽引してきた平凡パンチの勢いは80年代になって鈍り、1988年ついにその歴史に幕を閉じた。リアルタイムで読んでいた私には、パンチのほうがあかぬけない誌面になった気がした。(pp.133)
わたしも昔そう感じていました。
「そう感じていました」というのは、要するに、2冊どちらをも購入していたわけです。
っていうか、
21世紀のいま、平凡パンチはすでに消えたが、週刊プレイボーイは19万部前後でなお発行中である。(pp.135)
『週刊プレイボーイ』がまだ存続している事実を知りませんでした。
今後ともがんばってほしいものです。
第6章は、「豆単」「でる単」。
高校生のわたしは「でる単」つまり、
森一郎著『試験にでる英単語』、青春出版社(1967年)
を手元に置きましたが、書内すべての単語を暗記するという芸当ができず、中盤へたどりつく前に音をあげました。
残念な思い出です。
第8章のテーマ、
五島勉著『ノストラダムスの大予言』、新興出版社(1973年)
については、当該作が世間を騒がせている状況は知っていたものの、わたし自身は読む気がなく、「ナンセンス」としか思っていませんでした……。
以上、『ベストセラー伝説』は、登場してくる話題ひとつひとつに自分史を重ね合わせることができ、内容を楽しめます。
わたしと同世代の人たちならばきっと似たような読書体験にいたり得るでしょう。
逆に、若い読者層はまるで感慨をおぼえないのではないか、と心配いたします。
金原俊輔