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『新型コロナと貧困女子』、中村淳彦著、宝島社新書、2020年。
新型コロナウイルス感染症拡大により社会が隅々まで悪影響をこうむっている現今、著者の中村氏(1972年生まれ)は、特定の女性たちに焦点を絞られたうえで、パンデミック被害の度合いを詳(つまび)らかにするインタビューをおこないました。
インタビュー対象となったのは「女子大生風俗嬢(pp.31)」「ベテラン風俗嬢(pp.126)」それに「街娼(pp.175)」の皆さまです。
どなたもが過酷な状況に置かれていらっしゃいました。
読みつつ苦しくなってしまうルポルタージュです。
まず、女子大学生。
もともとコロナ禍の前から日本経済が低迷していた結果、
「ピンサロで働き始めたのは大学2年の夏休みからです。どう考えても大学生を続けるためには、もうそれしかないって判断でした。(後略)」(pp.87)
学生は生活に必要なお金が労働集約型の非正規労働では稼げない。大学で勉強したい学生ほど、必然的に高単価の付加価値の高い非正規労働に流れることになり、女子大生は風俗嬢まみれになってしまった。(pp.93)
それでは、引用の流れが発生したことで「ベテラン風俗嬢」にはどんな余波がおよぶのか?
女子大生が風俗に入ってくるたび、30歳を超える女性たちの価格が下がり、市場から追い出されていく。(pp.118)
売れないベテラン風俗嬢に店は冷たい。「お前、邪魔だから早く家に帰れ」など、冷たい言葉を数日おきに投げられている。(pp.126)
むごい事態といわざるを得ません。
そうしたなか、女子大生風俗嬢・ベテラン風俗嬢の両者へコロナに起因する激浪が襲いかかってきました。
「コロナで4月1日からまったくお客さんが来なくなって、すぐに出勤制限。その日は21時で帰されました。それからLINEがきて、もうしばらく来なくていいって。結局、店は休業しちゃいました。(後略)」(pp.72)
加齢でどんどんと収入が減り、ギリギリの生活を続けていたが、突然起こった新型コロナ騒動で収入がなくなってしまった。最低限の生活も送ることができなくなり、混乱していた。(pp.117)
以下を読むと、街娼の人々も例外ではなく、
「昔は(中略)お金もよかったから、生活に困るなんてことはなかった。けど、いまは厳しい。コロナで人が歩いていない。(後略)」(pp.197)
「収入はコロナのせいでなにもなくなった。前はあったの。(中略)コロナで客足がなくなっちゃって、もう殺されちゃうくらい」(pp.203)
切実です。
彼女たちのほとんどが「税金の申告も、消費税の納入もいっさいしていない(pp.165)」ため、国や自治体の支援を受けることができませんでした。
しかし、2020年の、
4月上旬、厚生労働省は一斉休校に伴う休業補償から暴力団関係者と風俗関係者を除外していたが、すぐに風俗嬢やキャバ嬢、ホステスも対象とする内容に変えた。(pp.236)
『新型コロナと貧困女子』において、ただひとつホッとする情報です。
コロナのせいで困難に苛(さいな)まれている業種としては、観光業・宿泊業・外食産業・乗り物・デパートなどが代表的と見られていますが、当然ながら、左記だけではありません。
本書は、わたしのみならず、世間一般がほとんど認識していない領域の惨状をつぶさに紹介してくれた、意義ある読物でした。
政治家諸氏は是非とも目を通しておくべきでしょう。
金原俊輔