最近読んだ本583:『日本の死角』、現代ビジネス 編、講談社現代新書、2023年

現代日本に存する諸事象・諸問題、それらは、災害時の避難先に避難所の機能を有していない体育館が選ばれがちな件、「個性的」は若者が忌避する表現である件、夫婦の死後離婚および別墓が増加中の件、糖質制限ダイエットのためお米が悪者あつかいされている件、「フクロウカフェ」のよろしくない実態の件、非日本人への差別の件……等々なのですが、そうした事象や問題を16名の論者が考察なさいました。

全16本の論考がどうだったかというと、データの裏打ちがあるものがあったと思えば、個人体験を書いたに過ぎないものもあって、玉石混交でした。

いくつか見てみましょう。

まず、「『日本人は集団主義』という幻想(pp.11)」。

実験結果に基づいた興味深い傾向が語られ、わたしは「なるほど」と納得しました。

「日本人が大好きな『ハーバード式・シリコンバレー式教育』の歪みと闇(pp.41)」章は、アメリカの深刻な教育格差を紹介しています。

「女性に大人気『フクロウカフェ』のあぶない実態(pp.179)」では、フクロウカフェにおける各種動物虐待が糾弾されており、

世界からは、拘束具が残酷であるという声があがり、日本人は野生動物との付き合い方を誤っていると捉えられ、批判の的にもなっている。私たちアニマルライツセンターにも、外国人観光客からのアニマルカフェや動物園についての通報が後を絶たない。(pp.189)

じゃあ国内外の鷹狩りとかウサギ狩りとか闘牛とか競馬はどうなんだという疑問が生じ、「外国人観光客」の「通報が後を絶たない」の部分で日本・北欧などの捕鯨船に対する「シーシェパード環境保護団体」の乱暴な抗議活動を連想させられて、複雑な気分になります。

わたし自身は動物の命を奪ったり自由を拘束したりするおこないに極力加担しないと決めていますので、アニマルカフェみたいな所へ行く気は毛頭ありません。

「家族はコスパが悪すぎる? 結婚しない若者たち、結婚教の信者たち(pp.115)」章では「若者が結婚しにくくなっている(pp.123)」理由のひとつに、

それは格差婚、すなわち女性が自分よりも学歴や収入など社会的地位の低い男性と結婚する傾向が少ないままだから、ではなかろうか。
家族社会学では、上で見たような「格差婚」のことを女性下降婚(ハイポガミー、以降、下降婚)と呼ぶ。(pp.123)

「女性下降婚」なる専門用語を初めて知りました。

その定義、「学歴や収入など」のくだりが弱いです。

たとえば、東京大学卒で公務員の女性が年収1億円の高卒男性と結婚するのは女性下降婚に該当するのか?

すごい資産家の親をもち無名短大を出た女性が有名大の大学院修了ながら低所得である男性研究者と結ばれた場合は?

以上より、学歴なら学歴、収入なら収入と、「社会的地位」の構成指標をひとつに絞る、または、学歴・収入といった言葉ではなく学校偏差値や預貯金額などの数字を使って定義する、のが望ましいと感じられました。

それにしても統計上「下降婚率が増えると、出生率が高まる(pp.125)」傾向が国際的に確認されている由で、しかし日本は女性下降婚が少ない国だそうですから、少子化に悩むのは当然の成り行きと言えるでしょう。

われわれは日々何かしら自国の問題に直面しつつ暮らしているわけですが、『日本の死角』はふだんあまり意識していない領域に目を向けさせてくれる読物でした。

金原俊輔