最近読んだ本596:『ソース焼きそばの謎』、塩崎省吾 著、ハヤカワ新書、2023年

折節、無性にソース焼きそばを食べたくなることがあり、そんなとき、わたしは迷わず近隣のお店へ行き大盛りを注文します。

上掲書は「縁日の屋台。ありあわせの食材を使った土曜のお昼ごはん。コンビニで買ったカップ焼きそば。(pp.4)」、われわれ日本人のソウルフードのひとつ、ソース焼きそばを題材とした内容。

わたしがこれまで存じていなかった情報のぎゅう詰め状態でした。

ソース焼きそばは、お好み焼きの一種として発祥したのだ。(pp.5)

そうだったのですか。

いわゆる「日本三大焼きそば」とされている、富士宮やきそば・横手やきそば・上州太田やきそば(後略)。(pp.200)

「日本三大焼きそば」なる乙な認定があるわけですね。

加熱している段階では味付けせず、皿に盛った焼きそばへ、客がソースを直接かけている。浅草ひょうたん池の露店の焼きそばも、やはりソースを後からかけていたようだ。(pp.159)

当方「ソースを後からかけて」という焼きそばの食しかたは未体験ながら、どうやらわたし個人が未体験であるに過ぎず、じつのところ「全国各地にソースを後がけする焼きそばがある(pp.6)」由でした。

以上3例は、知っていてもさほど人から感心してもらえそうにない情報なのですが、興味深くはあります……。

さて、塩崎氏(1970年生まれ)は本書にて、多数の資料を参照しつつ、主としてソース焼きそばの起源を究明せんとなさいました。

鉄板で焦げるソースにも似た、むせ返るほど濃密で刺激的な歴史探究(後略)。(pp.6)

むろん焼きそばそれ自体のルーツは「中華料理の炒麺(チャーメン)(pp.6)」にほかならないものの、「味付けにウスターソースを使う点(pp.37)」は日本の工夫なのだそうです。

当該工夫がわが国のどこでなされたのかという問いへの解には直接本書を読んで接していただきたいと思いますが、塩崎氏は解を述べる箇所で、

ソース焼きそばは100年以上の歴史を持つ、日本が誇るべき伝統的な食文化のひとつである。その認識が広く共有されることを願っている。(pp.267)

このように記されました。

そう言われると、なんだかまたもやソース焼きそばをいただきたくなってきます。

『ソース焼きそばの謎』。

ソース焼きそばの歴史を精査し、国内どの地で発祥したかを検証した労作で、まるで専門書みたいな知的雰囲気が漂っていました。

金原俊輔