『偽文士日碌』、筒井康隆著、角川文庫、2016年。

著名なSF作家である筒井氏(1934年生まれ)の、高齢者としての日常を記した本です。

わたしは若かったころ、筒井氏のファンでした。
しかし、やがて小説全般を手に取らなくなったため、同氏からも遠ざかりました。

『美藝公』または『ロートレック荘事件』のどちらかが、わたしが最後に読んだ作品です。
どちらも素晴らしい完成度でした。

おそらく筒井氏は、現在ご存命の作家としてトップレベルの存在でいらっしゃるのではないでしょうか。
わたしが思うだけではなく、『偽文士日碌』に目を通すと、実際に周囲の関係者たちから当代きっての文学者として敬され仰がれている状況が窺えます。
その結果としての華々しい毎日が語られている本です。

ところで、書中につぎのような一節がありました。

この日来る筈だった行動分析学の先生は、恩師の急逝で来られなくなった。佐藤春夫の子息だったというこの先生は、酔っぱらいの行為によってプラットホームから落され、轢死されたのだ。行動分析学というのは、例えばいかにして煙草をやめさせることができるか、などの研究をする学問だが、いかにして酒をやめさせるかを研究した方がよかったのではないか。(pp.190)

これは佐藤方哉先生(1932~2010)とおっしゃる元・慶応義塾大学教授のことです。

アメリカの心理学者スキナーが体系化した行動分析学を日本に根付かせる努力をされたかたでした。

スキナー学派に身を置くひとりとして、わたしは佐藤先生のご著書や論文を多数読みましたし、講演を聞きに行ったこともあります。
先生のご逝去には驚かされました。

筒井氏とのつながりはなかったようですが、日記への突然のご登場でした。

なお、行動分析学は、過度な飲酒をやめさせる方法も研究しています。

金原俊輔