『知の教室:教養は最強の武器である』、佐藤優著、文春文庫、2015年。

タイトルに「知」とか「教養」とかをつけた本を書くのは、よほどそちら方面に自信を有する書き手でないとできないことでしょう。

実際、自信があっても不思議ではないかたがたが、これまでそうした著作を出版されてきました。

当然のなりゆきながら、その類の本を読めばかならず何らかの意味合いでの学びにつながります。

上掲書も例外ではありませんでした。

著者(1960年生まれ)は、かつて「在ロシア連邦日本国大使館」に身を置かれていた人物です。

ロシアに関する知見は他の識者たちのそれを凌駕しています。

わが国にとって「ロシアとどのような形で交わるべきか」を検討するのは常に重要な課題であり、書中では当該課題に対して参考になることが多々述べられていました。

かと思うと、けっこうくだけたページもあります。

たとえば「第3講座」内の「凡人が生き抜く話術7カ条」。

ここでは、

「友達は五人でいい(pp.69)」

「『猫』『鉄道』など、心を通わせるものについて語れ(pp.71)」

「中途半端な英語は話せないほうがいい(pp.72)」

・・・など、「ああ、たしかに」と納得にいたる提言がわかりやすくなされていました。

『知の教室』には対談もいくつか載っています。

池上彰氏との対談の、情報収集が大事だという話の流れのなかで、佐藤氏は、

日本の場合、一般紙のほとんどが高級紙ですから、新聞を読んでいる=アッパーミドル以上です。それに対してネットとスマホに頼ってる人は将来のプロレタリアート予備軍。つまり上に行きたかったら新聞を読めということ。その点はよ~く考えたほうがいいと思う。(pp.32)

と発言されました。

賛成します。

大学教員そして中学・高校のスクールカウンセラーであるわたしは、いまの若者たちが紙に印刷された文章を読まなくなっていることを知り、憂いています。

「大学生の40パーセントが読書をしない」という調査結果もあります。

彼らが先々プロレタリアートになってしまうかどうかはさておいて、教養を身につけるために(本書の副題になぞらえれば、教養という武器をもつために)、ぜひ日常的に新聞や書物に接してほしいものです。

金原俊輔