『日本の隠れた優秀校:エリート校にもない最先端教育を考える』、藤原智美著、小学館文庫プレジデントセレクト、2017年。

全国の幼稚園から高等学校までのうち、教育方法に特色があるところを紹介した本です。

公立・私立の両方があつかわれていました。
一般の学校ではない、教育研究所や体育教室なども含まれていました。

教師兼スクールカウンセラーのわたしにとって「教育」は至極興味をおぼえる分野です。
心躍らせながら本書を開きました。

読み終えた感想を語る前に、まず、確認しておきたい事項があります。
教育の方法を検討する際、以下の3点に留意しておかなければ、その方法には疑問符がつく、ということです。

第一に、目新しい教育方法が特定の知能を有する子どもたちのみを対象に研究され開発されたものではないか、という点です。
たとえば、入学がむずかしい学校で新教育をおこない何らかの成果にいたったとしても、それは当該教育が有効だったのではなく、たんに授業を受けた生徒たちが優秀だった、こうした可能性を否定できなくなるためです。

第二に、とある教育の方法で生じた成果がどれくらい持続したのかも押さえておく必要があります。
なぜならば、ある子が中学1年生だったときに現れた効果が、翌年、中2になったときには雲散霧消しているような場合、その教育法をありがたがる必要はないからです。

第三に、新奇な教育の方法で得られた効果を「子どもたちが生き生きしてきた」「あいさつが良くなった」的な主観的受けとめかたで評価することは望ましくありません。
そうではなく「試験の平均点が(これまでよりも)20点上がった」とか「授業中に居眠りする生徒が5名いたのに、新たな教育を施していた期間は1名に減少した」といった、数えることができる客観的な指標を用いるべきです。

上記の観点から本書に目を通すと、3つの中のどれかを満たしている事例はいくつもありましたが、すべてをクリアした例はありませんでした。

ここで書かれている学校のやりかたが本当に良いのかどうかは分らない、という結論になります。

生徒たちに国語辞典を常用させる中学校、児童にそろばんを習熟させようとする小学校、ふたつの学校の取り組みは印象に残りました。

著者(1955年生まれ、男性)は、多くの人が関心をもつであろうテーマに着眼され、その領域へ果敢に踏み入ってゆかれています。

しかしながら、どの教育機関を訪ねられたときも、

1 教育方法の説明を受ける

2 考察する

3 子どもたちと会う

4 子どもたちの能力に驚き、感心する

同じパターンを繰り返されています。

もうすこし報告の仕方に趣向を凝らしてほしかった、と思いました。

無名のわたしが「芥川賞受賞作家」がお書きになったルポに身のほど知らずな注文をつけたわけですが、同年齢同士の親近感がそうさせた、というご理解でお許しください。

金原俊輔