『東大助手物語』、中島義道著、新潮文庫、2017年。

大学の教員採用や昇格人事は、わたし自身も大学教師ですから無縁な事柄ではありません。

多くの大学において、採用・昇格の際は、候補者の学歴だの業績だの人柄だの、それら以外の微妙な条件だの、さまざまな要因の影響を受けたドラマが展開してゆくみたいです。

ましてや日本の全大学の頂点に君臨する東京大学。
採用および昇格がらみで、さぞかしおもしろい話題があることでしょう。

わたしは上掲書の内容に期待を禁じ得ませんでした。

もうひとつ、助手でいらしたかたが地道に研究をつづけ、良い論文を書かれ、論文が評価されてご本人の昇進に結びついた、というような話であることも漠然と期待しました。

最近まったく研究をおこなっていないため、自戒のきっかけにしたかったのです。

しかし、わたしの期待はふたつとも外れてしまいました。

この本は、採用・昇格・研究のエピソードを含んではいたものの、おもに著者(1946年生まれ)が東京大学で体験した「パワハラ」に関する告発書でした。

がっかりしましたし、なにしろつらいできごとが記述されていたせいで、読書中いくぶん不快にもなりました。

わたしはこういう種類の読物を好みません。

ただ、日本人の上位1~5パーセントぐらいしか有していない明晰な頭脳を誇る東京大学の先生がたであっても、職場でやっている行為は残りの90数パーセントのそれと大して変わらない、ということは理解できました。

物語がハッピーエンドで終わった点はご同慶の至りです。

金原俊輔