『メディアの驕り』、廣淵升彦著、新潮新書、2017年。

著者(1933年生まれ)は長くテレビ局にご勤務し、現在、国際ジャーナリストとして活躍されています。

そのご経歴を交えながらマスメディアのありかたを批評・批判したものが上掲書です。

マスメディアとはいっても、全般ではなく、おもにテレビが対象でした。

それはそれで構いません。
わたしはほとんどテレビを観ないものの、「自分が知らない世界を、自分が知らない人物が語る」内容の本は、しばしばおもしろい読書体験となるからです。

本書もそうでした。

最もおもしろかったのは第3章「放送のロマンを築いた人々」で、とりわけデイヴィッド・サーノフ(1891~1971)というかたのエピソードが白眉でした。

この箇所は批評・批判ではなく、評伝みたいな感じになっています。

サーノフ氏は1912年、タイタニック号の遭難に、無線通信士として関わりをもちました。

当時の彼は、ロシアからアメリカ合衆国に移住してきた、貧しい無名の青年に過ぎなかったそうです。

しかし、タイタニック遭難の情報を世界に伝えようとした奮闘が評価されて有名になり、出世もし、のちにはラジオ局「RCA」およびテレビ局「NBC」を所有するまでに至りました。

爽快な実話であり、わたしはこうした話を知った際に読書の喜びを感じます。

ところで、『メディアの驕り』書中には、つぎのようなことも書かれていました。

よく耳にする俗論のひとつに「アメリカのメディアを牛耳っているのはユダヤ人だ」というのがある。こうした意見の中には、「公共の電波を用いるメディアのトップが揃いも揃ってユダヤ人というのはおかしい。そこには何らかの陰謀があるのではないか」という響きが込められている場合が多い。一般人はもとより、有識者の多くもそう思い込んでいる。
ペイリーたちの苦闘を少しでも知る者にとっては、そういった陰謀説がいかに根拠のない作り話かが分かる。(中略)彼らは、あくまで個人の才覚と先見性に基づいて、それぞれの王国を築いたのだ。(pp.120)

わたしはアメリカでの大学院生時代、ユダヤ人クラスメート多数と机を並べて勉強しました。

その人たちの抜群といえる頭の良さ、(「超」がつくほど)まじめな受講態度、成績を高める懸命の努力、などを思い起こしつつ、心から上記の文章に賛成します。

金原俊輔