『貧困のハローワーク』、増田明利著、彩図社、2016年。

飯場労働者、テレビ番組制作会社のアシスタント・ディレクター、トラック運転手、製缶工場の派遣社員、ブラック企業のシステム・エンジニア、といった全17種類の職業について調査し、その実態を報告したルポルタージュです。

各労働者が直面している過酷な勤務体制や低収入状況が詳(つまび)らかに描出されており、内容が非常に深刻で、読んでいて救われない気分になりました。

どのかたも貧しく、そして将来へ向けての希望が乏しい、二重苦のご様子でした。

本書には肥満者が多数登場してきます。

食生活も不規則なうえにジャンクフード、ファストフード、惣菜弁当ばかり食べているので体重増加も止まらない。
「以前は65キロ前後だったのが今は82キロです。3年ちょっとで17キロも増えちゃった」
それでいて血色は悪い。必要な栄養は少ないがカロリーの高いものばかり食べていたからこうなったのだろう。(pp.55)

まともな食事を口にして健康に気をつけることが経済的・時間的に無理なため、太ってしまうようです。

精神のほうに悪影響があらわれた労働者もめずらしくありませんでした。

これだけ過重労働が続くと心身に異常をきたす社員が出てくる。(中略)
「自分の場合は最近、睡眠障害みたいになってしまいました。疲れてもう目を開けているのも辛いのに横になっても寝つけないことがある。そのうち足がピクピクしたり上半身が痺れるような感覚に襲われることがある」
次の日は休めるという夜は目覚し時計をセットしないのだが、目覚めたらもう夕方4時ということもある。(中略)
年齢の近しい同僚には精神的に危ない人も数人。
「普段は物静かな人なのに酔った勢いで派手な喧嘩をして警察に捕まったとか、新興宗教に嵌まって人格が変わってしまった後輩もいる」(pp.135)

われわれ読者は、日本の一角にこうした世界があり、そこに身を置く人たちが苦しみにあえいでいる事実を認識すべきです。

また、国は、人間をこのようにあつかい、このような思いをさせている職場を、放っておいてはいけません。

労働基準監督署さらには労働局によるブラック企業摘発のニュースを見聞きするつど、世間は賛同・支持します。
わたしも賛同・支持します。

しかし、実は摘発件数がもっと多くてしかるべきなのでしょう。

最後に、『貧困のハローワーク』内でオフィスビル清掃員の話題となった際、わたしは東京在住だった学生時代にビル掃除のアルバイトをしていたことを思いだしました。

ラグビー部員で体力があったため「仕事がきつい」と感じませんでしたが、年配のみなさまがたは疲れを訴えていらっしゃいました。

いまのわたしは当時のみなさんよりも年上です。
足腰が自身の一部分ではないみたいに弱くなり、疲れもおぼえやすくなりました。

「あのとき、もうすこしお手伝いをしてあげればよかった」と反省しています。

金原俊輔