『バカ格差』、谷本真由美著、ワニブックスPLUS新書、2018年。

タイトルの「バカ格差」とは「バカバカしい格差」を省略した言葉。

上掲書は、現代社会で見られる各種のバカバカしい格差、そして改善できそうな格差を、ひとつひとつ指摘したものです。

あつかわれた格差は、学歴の格差や収入の格差といった「定番」的なものから、企業間の有給休暇取得格差、勤務先会社名で起こる格差、さらにはマンション居住階のせいで生じる格差……みたいに割とニッチなものまで、多岐にわたっていました。

正社員・非正規雇用社員のあいだに横たわっているバカ格差を検討する項では、

このような人の無駄遣いが組織力の低下につながります。意欲の低下、職場の調和の乱れ、生産性の低下を招くのです。(中略)
ですから非正規雇用の人を不当に扱うと、短期的には人件費の節約として企業が得をするように思えるかもしれませんが、中長期で見ると組織全体が悪化するわけです。(pp.68)

健全な常識に基づくご意見と思います。

一冊を通して、谷本氏(1975年生まれ)がおもちの健全な常識が脈打っていました。

わたしは歓を尽くしました。

ただ、読みすすむなかで、気になる部分がありました。

たとえば、所得分配の格差指標である「ジニ係数」を語る際、日本のそれは幸いにも0.37となっており、

他の国に比べるとまだまだその差は小さいのです。
先進国ではアメリカが最も指数が大きく、0.41です。新興国は格差が大きいことが多く、ブラジルは0.63、南アフリカは0.53です。(pp.168)

とのこと。

しかしながら、本書167ページに載っている「世界銀行」発表のグラフを眺めると、南アフリカが0.63、ブラジルが0.53になりますので、真逆、本文のほうは間違いではないでしょうか。

つぎに、「なんと」という表現の使用が多すぎます。

例としては、

2015年には中国で100万ドル以上の資産を持つ富裕層は1年でなんと8%増えており、314万人にものぼります。さらに1億ドル以上の資産を持つ億万長者はなんと596人で、アメリカにも多いです。(pp.176)

もっと節約して使うべきでした。

ちなみに、この引用文・文末の「アメリカにも多いです」は「アメリカよりも多いです」という意味なのか、それとも「アメリカに移住した中国系の人たちも多く含まれています」という意味なのか、よくわかりません。

以上のような瑕疵(かし)はあったものの、テーマの設定および考察が秀逸で、わたしは本書が発している情報や見解を非常に大切と感じます。

結論の章で、著者は格差へ対抗する手段として、

重要なのは勉強です。
もちろん経済学やファイナンスの勉強も大変重要なわけですが、それ以上に重要なのは幅広い教養を得ることです。
例えば歴史や文学は一見お金を貯めたり使ったりすることには関係ないようですが、世の中の動きを理解し、先を読むのには大変重要です。歴史は必ず繰り返しますから、過去から学ぶことは可能です。人間はそれほど賢くはありません。
文学は異なる文化圏の人々の心の中を知るのに役立ちます。ですから様々な国の文学を読むことは重要です。
この他に文化人類学や芸術といったものを学ぶこともとても重要です。(pp.208)

こうお書きになりました。

わたしは、これ以上同意しようがないほど、同意します。

金原俊輔