『京都学派』、菅原潤著、講談社現代新書、2018年。

京都学派とは、京都大学の西田幾多郎(1870~1962)から始まった、西洋哲学を研究対象とする学者たちのグループのことです。

おおむね1930年ごろに成立し、見方によっては現在にいたるまで存続している模様。

『京都学派』は、当該学派に所属した哲学者諸氏の思想や行状を紹介する内容でした。

太平洋戦争を支持したために、戦後、公職から追放されたメンバーもいたそうです。

わたしは上掲書を「新京都学派」に関する本と勘違いして購入しました。

そのため、登場する面々がお書きになった書物は、わたしにとって馴染みが薄いものばかりでした。

ページを開いてすぐ自分の勘違いに気づきましたが、重厚で知的好奇心を刺激する中身だったため、途中で本を投げだすのが惜しく、最後まで読み通しました。

お目当ての新京都学派も終盤であつかわれていたのは、ありがたかったです。

さて、どちらかといえば新京都学派に加えられる上山春平(1921~2012)は、戦時中、人間魚雷「回天」の搭乗員でした。

山口県の光(ひかり)基地での訓練中に遭難し、窒息寸前で救出された。敗戦直前の2回の出撃ではいずれも爆雷攻撃を受け、九死に一生を得た。光基地で同僚となった東大法学部卒の和田稔(わだ・みのる、1922~45)は訓練中に窒息死し、その遺骨を上山自身が和田の実家に届けた。和田が残した4冊の手帳は『わだつみのこえ消えることなく-回天特攻隊員の手記』(角川文庫)に収められた。その解説は上山自身が執筆した。(pp.200)

書斎で沈思黙考している哲学者のイメージとはまったく異なる、現世的かつ悲痛な体験をされています。

和田稔著『わだつみのこえ消えることなく:回天特攻隊員の手記』、角川文庫(1995年)は、わたしにとって心に残る名著であり、以前、このコラムにおいても紹介したほどでした。

たしかに上山春平の解説が付いていました。

……ここまでで『京都学派』の話を終わらせていただきます。

これより、わたしが読んだ「学問の世界・学者・研究者」関連書籍のトップ・テンです。

かつて似たような発表をしたことがあるので、今回は著者が日本人である作品のみに限定しました。

ただし、『京都学派』を含め、すでに本コラムで語った書物は除外しています。

第1位 『小室直樹の世界:社会科学の復興をめざして』、橋爪大三郎編著、ミネルヴァ書房(2013年)

第2位 『くまくす外伝』、平野威馬雄著、濤書房(1972年)

第3位 『オーギュスト・コント:社会学とは何か』、清水幾太郎著、岩波新書(1978年)

第4位 『本居宣長 上・下』、小林秀雄著、新潮文庫(1992年)

第5位 『サルトル:実存主義の根本思想』、矢内原伊作著、中公新書(1967年)

第6位 『おかしなおかしな数学者たち』、矢野健太郎著、新潮文庫(1984年)

第7位 『知的生活の方法』、渡部昇一著、講談社現代新書(1976年)

第8位 『闘う物理学者!:天才たちの華麗なる喧嘩』、竹内薫著、日本実業出版社(2007年)

第9位 『東大駒場学派物語』、小谷野敦著、新書館(2009年)

第10位 『知的生産者たちの現場』、藤本ますみ著、講談社(1984年)

第2位の本は高校生のときに読み、図々しくも「将来、学問をやりたい」という気もちが生じました。

第7位を手にしたのは浪人時代です。

同書によって「どこでも良いから早く大学へ入り、学問に触れたい」との思いを新たにしました。

2冊から受けた影響のおかげで、わたしは現在、臨床心理学界の末席を汚すことができています。

金原俊輔