『言霊USA2018:激震!セクハラ帝国アメリカ』、町山智浩著、文藝春秋、2018年。

本書は『週刊文春』誌に連載されているコラム「言霊USA」の文章をまとめたものです。

アメリカ在住で、かの地の近況をわかりやすく日本へ報告しつづけている町山氏(1962年生まれ)が執筆されました。

今回はトランプ大統領にたいする揶揄(やゆ)が頻出します。

著者は、

毎週毎週トランプのことは書きたくないんだけど、次々とバカなことをやるので書かないわけにはいかない。(pp.74)

オイラも毎週トランプのことばかり書きたくないよ。でも、アメリカでその週いちばんインパクトがあった言葉を扱う連載だから、失言マシーンの大統領には勝てないんだ。(pp.89)

こう弁解されました。

日本人読者にとって最も関心が高いアメリカのできごとはトランプ大統領の言動ですから、弁解のご必要はありません。

トランプ大統領以外では、現今のセクハラ「#MeToo」告発に関連する重たい話題も紹介されています(この話題でもトランプ氏がたびたび登場してきました……)。

さらに、下記のようなインターネットにまつわる事件も。

ロシアがでっち上げた架空の団体「ハート・オブ・テキサス」が「テキサスのイスラム化を防ごう」とヒューストンのイスラミック・センターの前で抗議集会を呼びかけ、それに対するカウンターをやはりロシアがでっちあげた「ユナイテッド・ムスリム・オブ・アメリカ」が呼びかけ、両者に煽られた人々が路上で激突しそうになった。
ロシアのサンクトペテルブルクからわずかな広告費を出すだけでテキサスの住民同士を戦わせることができるのだ。「ロシアはこうした情報戦を10年前から始めています」と、情報委員会でマーク・ワーナー上院議員(民主党)は語った。
日本でも反韓国や中国、反フェミニズムのツイートをするとお小遣いがもらえるシステムが判明して問題になっているが、その資金はいったいどこから出ているのか。日本国民を分断して対立させて利益を得るのは誰なのか。(pp.192)

おそろしいことです。

もはや何を信じて行動すればよいのか分らない時代となってしまいました。

ネットばかりではありません。

アメリカでは、テレビ局が放送するニュース番組の偏向も取りざたされています。

台湾においては、中国資金が入った新聞社の記事・社説への信頼が低下しました。

引用文にあったとおり、日本とて例外ではないのです。

他者操作を意図した情報に踊らされないための自衛策として、わたしたちは幅広い読書をし、読後、自分で考える習慣を身につけなければならないでしょう。

これだってもちろん限界はありますが……。

『言霊USA』は本来アメリカ社会に関する読物であるものの、アメリカで起こることの多くはやがて日本でも起こり得るので、われわれは同書の内容をもって「他山の石」としなければなりません。

金原俊輔