『日本を蝕む「極論」の正体』、古谷経衡著、新潮新書、2018年。

まず、著者(1982年生まれ)は「極論というものを目にすることが多くなった(pp.7)」旨を語られました。

ここでいう極論とは「コモンセンスから外れた物言い(pp.8)」で、機序は「競争のない、閉鎖的な集団や組織から極論は常に発生する。(中略)内部にいる人間たちには正論として信じられてしまう(pp.8)」と、論旨が一貫しています。

そのうえで、教育現場における極論、TPP反対者が連呼する極論、「プレミアム・フライデー」という極論など、全部で8種類の極論を取りあげ、考察されました。

わたしは以前、おなじ著者による『知られざる台湾の「反韓」:台湾と韓国が辿った数奇な戦後史』、PHP研究所(2014年)を読みました。

そうしたところ、話はまさに(根拠が薄弱なのに我田引水な結論にたどりつこうとする、学界の約束ごとから逸脱した物言いの)極論でした。

内容もスカスカで、フィールド調査をした形跡すらありません。

おそらく(わたしのような)日本の台湾ファンたちの購入を当てこんだ出版物と想像されました。

そのせいで、わたしは『日本を蝕む~』に期待していなかったものの、今回はそれほど悪い内容ではなかったと思います。

古谷氏のご意見にすべて賛同するわけではないにせよ、全体的に議論がしっかりしており、主張が明確でした。

プレミアム・フライデーについての論考を引用すると、

前提条件は、「週休2日」つまり、土曜日と日曜日が休日になることを前提として設計されていることが分かる。(中略)「完全週休2日制」を達成している企業はどれくらいあるのか。厚生労働省における2016年度の「就労条件総合調査結果」によると、達成率は全企業の49パーセントと、半数に満たない割合であった。(pp.152)

「プレ金」を理由に、「仕事を早引けします」と一方的に宣言し、法定通りの休暇を取ってタイムカードを押すことのできる労働者は、労働者の中でも特権的階級に限られている。(pp.156)

舌鋒鋭く批判されました。

まあ、このプレミアム・フライデーは、ムキになって難詰するほどの極論とは思えませんが……。

ではここで、プレミアム・フライデーにまつわる、長崎メンタルヘルス社のエピソードをひとつ。

経済産業省が同スローガンを提唱した2017年2月、わたしは社内ミーティングでプレミアム・フライデーを自分たちの会社にも導入する案を提示しました。

勤労者のかたがたのための仕事をしている以上、まずは自社の労働条件をよりよくすべきと思ったからです。

そうしたところ、スタッフたちの反対を受けました。

反対の理由は、わが社のご契約先の多くが高い確率でプレミアム・フライデーを取りいれないであろう中、先駆けて導入した結果、月末の金曜午後に社内にだれもいなくなり、お問い合わせなどの電話をいただいた際にご不便をおかけしてしまう、というものでした。

わたしは得心がゆき、提案を撤回しました。

爾来1年数ヶ月が過ぎました。

当該制度は国内で普及せず、本書154ページによれば、首都圏でさえ実施率がわずか2.8パーセントなのだそうです。

スタッフたちが冷静に判断してくれたおかげで、わが社は一種の「勇み足」を避けることができました。

金原俊輔