最近読んだ本676:『ブラック企業戦記:トンデモ経営者・上司との争い方と解決法』、ブラック企業被害対策弁護団 著、角川新書、2024年
たいへん役に立つ本でした。
弁護士たちで構成される「ブラック企業被害対策弁護団」略して「ブラ弁(P. 3)」が、日本社会には部下に対してここまでひどい言動を示す連中がいる、産業現場でかくも悲惨なハラスメントを受けているかたがたがおられる……、そうした事案を詳述してくださっています。
事案につづき、法的な対応策が語られ、さらに助言も書かれていて、わたしのごとくハラスメント問題に関わりながらも法律を知らない産業カウンセラーにとってありがたい内容で、一気に読み進みました。
「知って良かった」と感じる助言だらけ。
それでは、わたしが「知って良かった」と感じた助言を、いくつか引用させていただきます。
まず、パワハラの被害者は、
人間の記憶はすぐに薄れる。私も、たとえば今年風邪をひいたのが何月だったか、すぐには思い出せない。記憶力に自信のない方は簡単で良いので、その都度、手帳に書き込む、LINEに書く(LINEは自分だけのグループも作れて、それは日付入りの自分専用メモになる)、といった癖をつけてもらいたい。(P. 124)
そうすべきでしょう。
つぎに、退職に関してですが、
退職は、労働者の一方的な意思表示により効力が発生するので、会社の承認は必要ない。(P. 184)
うっかり忘れがちな事柄です。
3番目。
労働契約締結時には雇用契約書、労働条件通知書などをもらっておいて、これを保存しておくことが重要なのである!(P. 207)
入手と保存は不可欠ですね。
最後に、
労働基準監督署は、働いていたという「きちんとした」証拠がない限り、残業時間を認定してくれない。
例えば、自宅にPCや資料を持ち帰って残業(持ち帰り残業)をしていたとしても、ほとんどのケースでは、それは「残業時間」と認められない。(P. 263)
「タイムカードや入退館記録などの固い証拠(P. 263)」が必要とのことでした。
以上、書中の情報ひとつひとつが労働者を守るもの。
ぜひどなたも本書を手元に置き、必要な折に参照してほしいです。
ご自分に益します。
わたしはブラ弁なる法律専門家たちが存在し、働いている人々の権利や立場のために闘おうとしてくださっている事実に、勇気づけられました。
インターネットにて「ブラック企業被害対策弁護団」を検索してみると、全国で30弁護士事務所が同弁護団に登録しています。
わが長崎県からもひとつの弁護士事務所が参加していらっしゃり、嬉しく思いました。
みなさまが目指すところは、
一般的に、裁判沙汰(労働審判も含む)になった際に一番重要となるのは、「証拠」があるかないかという点だ。証拠がないという理由だけでブラック企業を栄えさせる結果にしてはいけない! というのが、我々ブラ弁の最大の使命だ。(P. 194)
頼もしいぞ、ブラ弁!
金原俊輔