『新装版 三四郎はそれから門を出た』、三浦しをん著、ポプラ文庫、2019年。

小説家の三浦氏(1976年生まれ)がお書きになった書評です。

わたしは当初、氏を男性だと思い込んでいたところ、女性でした。

たいへん失礼いたしました。

上記タイトルは、

夏目漱石の代表作を羅列(られつ)したもの。遠い昔に文学史の授業で、「語呂(ごろ)合わせで覚えよう」と習ったのだが、作品名三つぐらい、わざわざ文章にしなくても覚えられるよな……。(pp.51)

おっしゃる通りです。

漱石のいわゆる「前期三部作」は網羅しているいっぽう、どうせ文章にするのだったら「それから三四郎坊っちゃんは草間クラと共に硝子戸の中を抜け倫敦塔の門を出ようと試みた」、こうやれば計8作が入るのに。

ただ、長すぎて暗記しづらく、本の題名にも使えませんが。

閑話休題。

『三四郎はそれから門を出た』は、おもに小説を対象にしています。

くわえて、エッセイ・自伝・評伝・史書・ノンフィクション・自然科学文献なども、あつかわれていました。

著者の幅広い読書に敬服しますし、「なによりも本が好き」というお人柄に親近感をおぼえます。

どれくらいお好きかというと、

雑誌の「インテリア特集」に載っているような部屋には、たいてい本が全然ないのだ。(中略)
「一カ月の携帯使用料が3万円、書籍購入費が320円。私の生活のどこをどう改善したら、貯金が増えるでしょうか」って、片腹(かたはら)痛いわ! 私の一カ月の書籍購入費といったら!
……怖いから考えないようにしている。(pp.135)

私は情けないことに、本に関係する仕事しか、長続きしない。(中略)
ちゃんと続けられた仕事は、新刊書店と古本屋でのアルバイトだ。やはり、好きなものに常に触れていられる環境がよかったのだろう。(pp.156)

本屋が私を呼んでいる。春の嵐に吹かれていくか。(pp.292)

ほほえましい文章です。

ところで、このかたの書評に接していると、描写があまりに巧みであるため紹介された作品をすぐさま読みたくなってしまいます。

読者をそうした気もちにさせるお力が他の書評家諸氏を上回っている模様。

わたしは小説家の筆力というものが半端ではないことを改めて知りました。

そして耐えきれず書店に走り、第2章第5回「怒りのパワーで残暑も克服」にて語られた、

室積光著『ドスコイ警備保障』、小学館文庫(2006年)

を購入してきました。

痛快なストーリーを堪能しながら、一気に読み終えました。

『三四郎は~』では『ドスコイ~』書を「残暑をすがすがしいパワーで投げ飛ばしてくれる(pp.54)」と評しています。

三浦氏のおかげで、まさにそんな読物に出会うことができました。

金原俊輔