最近読んだ本332

『フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』、マーティン・ファクラー著、光文社新書、2020年。

「データ」とは「資料」あるいは「情報」のこと。

「リテラシー」とは「理解する能力」。

したがって「データ・リテラシー」は「情報を理解する能力」の意になります。

氾濫する偽りの情報に惑わされない、情報の真贋を見極める能力の養成が大切、こんな思いが込められたタイトルでした。

著者はアメリカ人で、フリーのジャーナリストとして日本を中心に活動されているかたです。

過去「ニューヨーク・タイムズ」社でのご勤務が長かった由。

その関係でしょう、本書はデータ・リテラシーについてだけではなく、日米メディアの長短比較としても読める内容でした。

むしろデータ・リテラシーよりメディア論に重点が置かれていたような気がしたのですが……。

さて、現代人がデータ・リテラシーを高めるための、ファクラー氏によるアドバイスのひとつは、

基本的に3つか4つのメディアに目を通して比較する必要がある。たとえば朝日新聞や産経新聞、東洋経済や日本版ウォール・ストリート・ジャーナルを併読して読み比べてみるのだ。(pp.135)

大事なことと思います。

わたしは、新聞は長崎新聞および読売新聞の2紙を購読しています。

これに日本経済新聞を加えたい気もちはあるものの、残念ながら、毎日3紙を読む時間がなかなか作れません(ゴミも増えるし)。

ファクラー氏がおこなった別のアドバイスは、

NYタイムズやウォール・ストリート・ジャーナル、イギリスのフィナンシャル・タイムズ、日本経済新聞やザ・インフォメーションといったメディアの記事を読むとき、私はグーグルやフェイスブックを絶対に経由せず、メディアのプラットフォームに直接アクセスするようにしている。(pp.140)

いわれてみれば、ごもっともな心がけです。

自分自身に価値ある記事とグーグルだのフェイスブックだのが推奨する記事とが同じなはずはありませんので。

引用した対処の結果、われわれのデータ・リテラシーは高くなる、というわけです。

つづいて、メディア論。

著者は日本メディアとりわけ新聞へ具体的な提言をなさいました。

それは紙からスマホへの移行を図ることです。

「スマートフォンで記事を伝える」という方向に振り切ってから、NYタイムズのストーリーの組み立て方は、紙の時代とは完全に変わった。(中略)
発想と考え方を根本的に切り替えなければ、新聞社はスマートフォン時代に対応できない。そのかわり、うまく対応できれば、新聞社は有料購読者を大きく拡大できる。(pp.33)

スマホ用にするためには、

記事の見せ方とストーリーの伝え方も工夫しなければならない。スマートフォンはパソコンと違って画面がとても小さいため、一度に読める文字はせいぜい50文字だ。(pp.33)

スマホを所持していないわたしに実体験はないのですが、早急に取り組むべき課題なのだろうと想像します。

本書においては、ほかにも、

「報道姿勢を今こそ問い直せ(pp.49)」

「販売店と配達制度の桎梏(pp.53)」

「社説はもういらない(pp.169)」

こうした項目があり、わが国の新聞社が耳を傾けなくてはならない種々のご意見が述べられていました。

金原俊輔

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