最近読んだ本395

『世界のニュースを日本人は何も知らない 2』、谷本真由美著、ワニブックスPLUS新書、2020年。

谷本氏(1975年生まれ)は、イギリス人とご結婚され、現在イギリスにお住まい。

わたしは1年ほど前に、上掲書の前作にあたる、

谷本真由美著『世界のニュースを日本人は何も知らない』、ワニブックスPLUS新書(2019年)

を読み、本欄「最近読んだ本313」で感想を述べました。

第1作には母国をいささか小馬鹿にしたムードがたゆたっていました。

しかし、第2作目の今回は真逆になり、かなり日本礼賛的な内容です。

たとえば、教育制度に関する話題の最中、

イギリスでは、学校で健康診断を行いません。当然、虫歯のチェックもありません。
「日本の学校では毎年、健康診断がある」と家人や友人に伝えると、大変驚かれます。(pp.56)

新型コロナウイルス感染症への我が国の対応については、

マスクを嫌うイギリスなので、新型コロナが猛威をふるいはじめても、街中の薬局やスーパーでマスクは売られていませんでした。(中略)
日本人には、身体に良いものや新しいものはとりあえず試してみようという好奇心がありますが、イギリスの人々は案外保守的で、どれだけ良さそうなものであっても、自分たちの習慣と違えば絶対に受け入れません。(pp.28)

「国民一律10万円」のニュースは欧州でも報道されており、イギリス人で大学教員をしている私の家人や、友人たちは毎日「10万円! 10万円! ミスターアベはナイスガイ! 私は日本に移住したい!」と言っています。(pp.45)

アニメや漫画などのコンテンツ・ビジネスを語られる折、開口一番、

世界でもっとも大きな収益を生むコンテンツフランチャイズのトップ25のうち、なんと10が日本発なのです。
2020年、アメリカの金融会社タイトルマックスが実施した調査によれば、世界でもっとも収益が大きいのは任天堂の「ポケットモンスター(ポケモン)」で、2位は「ハローキティ」です。(pp.204)

こんな調子でした。

「1年のあいだに著者に何が起こったのだろう」と不思議に感じます。

むろん日本人読者として満更ではなかったものの、すこし議論の切れ味が鈍ってしまった気がする続編でした。

もっとも、重要な情報は頻(しき)りに登場します。

わたしは、アメリカ合衆国における子どもの行方不明数が毎年76万5千人にのぼる事実(112ページ)を初めて知りましたし、イギリスが「ヤンキー大国」である件(179ページ)も想定外でした。

イタリアでは「子ども部屋おじさん」「子ども部屋おばさん」と呼ばれる独立していない成人たちが多い(188ページ)のだそうです。

スウェーデンが蔓延する暴力やレイプに苦悩している旨(194ページ)の紹介にも衝撃を受けました。

本書を開いたおかげで、わたしは諸外国への理解を深めることができました。

谷本氏は最終ページにて、

さまざまな世界の情報に触れ、国際感覚を磨いていただきたい(後略)。(pp.244)

という(日本人への)願望をお書きになっていましたが、『世界のニュースを~』シリーズは当該願望を成就させ得る読物といえるのではないでしょうか。

金原俊輔

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