『猫楠:南方熊楠の生涯』、水木しげる作画、角川文庫ソフィア、1996年。

南方熊楠(みなかた・くまぐす)は、慶応3年(1867年)に生まれ、昭和16年(1941年)に74歳で亡くなった、実在の粘菌学者です。

人類学・民俗学・宗教・古典文学にも造詣が深い人物でした。

英語を始めとして18カ国語を話せたといいます。

22カ国語だったという説もあります。

とにかく怪物的な頭脳のもちぬしでした。

日本が生んだ世界に通用する大学者たちのひとりです。

東京大学予備門を中退後、欧米で学びました。

帰国してからは出身地の和歌山県で暮らしました。

研究に励むかたわら大酒を飲み、短気ながらも気が弱く、親分肌で情にあつい、愛すべき人柄だったようです。

わたしは高校時代に接したある本で南方のことを知り、彼の破天荒な生きかたや記憶力のすさまじさに興味をおぼえました。

南方に関しては評伝が複数書かれていたので、そのうち何冊かを入手し、読みました。

対象である南方の存在感が圧倒的なため、どれもが巧まざる良書となりました。

そして『猫楠』。

水木しげるはマンガで彼の半生を描きました。

南方の特異な人間像と水木の「退屈一歩手前」のゆっくりした世界が良くかみ合って、味わい深いマンガになっています。

本書は水木作品の中でもトップレベルの名作といえるのではないでしょうか。

金原俊輔