最近読んだ本699:『今日は、これをしました』、群ようこ 著、集英社文庫、2025年
上掲書は群氏(1954年生まれ)の日常をつづった身辺雑記的なエッセイ。
率直に述べますと、氏の他のご著作に比べれば、読者を惹きつける力は弱かったと思います。
しかし、わたしは面白く読みました。
というのも、氏とわたしは同じ世代に属しており、その結果、書中そこかしこに人生の終盤を迎えている者同士として共鳴できる文章があったからです。
最初の例。
群氏の愛猫が死んでしまったのち、
現在の私の年齢を考えると、ネコを飼っても最期まで責任を持って看取(みと)るのは難しく(後略)。(P. 106)
上記は、動物好きであっても、多くの高齢者が一歩を踏みだせない理由のひとつでしょう。
つぎに、
夜の10時には寝てしまう(後略)。(P. 115)
群氏がもともと早寝タイプなのかどうかは記されていませんでした。
わたしの場合、加齢にともなって就寝が早くなり、いまは午後10時半から同11時ぐらいにかけて寝付いています。
元号「令和」の話題のところでは、
よく考えると私は明らかに次の新元号を知ることができない。(P. 119)
ごもっとも……。
最後に、
新聞に掲載されている広告も読者層を狙ってなのか、明らかに中高年の肉体の不具合改善関係のものばかりである。
まあ年齢的には私にぴったりのものばかりといえなくもない。(P. 139)
広告のモデルの皆様がご年配だらけです。
さて、わたしは長いあいだ群氏のファンで、氏の多数の随筆に接してきました。
書痴のごとく読書に埋没なさったりアメリカ合衆国に体当たり旅行をなさったりしていた彼女だったものの、はや70歳代に入られたのだなと、感慨をおぼえます。
それにつけても、よく知られている通り、群氏はお若いころ「本の雑誌社」で働いておられました。
そして、同社を根城にしていた顔ぶれがすごい。
群ようこ氏のみならず、
○ 椎名誠氏(1944年生まれ)
○ 沢野ひとし氏(1944年生まれ)
○ 木村晋介氏(1945年生まれ)
○ 目黒考二氏(1946~2023)
……など、かなりの著名人たちを輩出してきています。
「漱石山房」や「トキワ荘」になぞらえるのは大げさかもしれませんが、本の雑誌社は左記ふたつに若干近い存在だったと言えるのではないでしょうか?
金原俊輔