最近読んだ本709:『SUMOOOO!!:流れ流れてハリウッド』、雨宮圭吾 著、文藝春秋、2025年
上掲書の主人公・田代良徳氏(1976年生まれ)は「身長188センチ、体重は(中略)180キロ近く(P. 9)」ある巨漢です。
明治大学ご卒業後に角界入りし、東桜山勝徳という四股名で栄進をめざされました。
しかし、最高位は幕下七枚目。
大相撲において「関取」と呼ばれ、「大銀杏も結え(P. 50)」「100万円以上の月給がもらえるようになる(P. 50)」のは、「十両以上の番付(P. 50)」なのだそうです。
氏は、その十両までたどりつけず、けっきょく2007年9月に引退なさいました。
退職金は10万円だった由。
31歳でした。
そして、ここから彼の人生が大きく展開してゆきます。
スーパーの店長として働くかたわら、「ウェブ制作会社(P. 80)」をご経営、同時に「『元お相撲さんブログ』を立ち上げ(P. 80)」られました。
そんな中、「日本ハムのソーセージのCM(P. 84)」に出るというお仕事が入り、やがて、ぐんぐん仕事量が増えだしたのです。
米国のスーパーモデルであるカーリー・クロス氏(1992年生まれ)とのツーショットが『VOGUE』誌に掲載されたうえ、インド・ベトナム・中国からの仕事依頼が殺到、米国ツアー挙行、ドイツ菓子「ハリボー」の日本版CM出演、果てはキアヌ・リーブス氏(1964年生まれ)主演のハリウッド映画に参加する話までもが飛び込んできて……。
『SUMOOOO!!』はこうした成功譚をつづった作品。
アスリートたちの現役引退後の身の振りかたに関する示唆も含まれている内容でした。
わたしはこの本を通し、ビジネスをおこなうにあたって、
(1)何かに打ち込んだ過去があるかどうかが物を言う
(2)気づきを大事にしなければならない
ということを学びました。
日本文化の象徴的存在としての「相撲」、自分たちが毎日当たり前のようにその一部を担っていた「相撲」。
それにこれほどの価値と需要があることに気づき、田代は驚いた。(P. 86)
田代氏は、プロとして相撲に励んだ過去を有されるばかりでなく、相撲の「価値と需要」にも気づかれたのです。
ご慧眼。
さて、判官(ほうがん)びいきという言葉があります。
これは社会を構成するさまざまな人々を対象に用いられ得る表現なのですが、比較的、お相撲さんに使われる場合が多いように思われます。
そして、わたしは、田代氏が残念なことに角界で出世できなかった事実から、まさに判官びいきの感情を抱きつつ、本書を読み進みました。
金原俊輔