最近読んだ本333

『いかがなものか』、群ようこ著、集英社、2020年。

1982年(昭和57年)は、ふたりの女性作家がデビューされた年です。

群ようこ著『鞄に本だけつめこんで』、新潮社(1982年)

林真理子著『ルンルンを買っておうちに帰ろう』、主婦の友社(1982年)

上記2冊がデビュー作。

わたしはどちらの本にも目を通し、すごい文才に感服して、以来、彼女たちが書かれてきた全随筆の半分ぐらいを読破しました。

長い時間をかけ、ポツリ、ポツリ、読んできた、という感じです。

そして2020年現在、群氏(1954年生まれ)も林氏(1954年生まれ)も相変わらず旺盛な筆力を示しておられるのは、ご同慶の至りと言わざるを得ません。

古いファンであるため慶んでいることに加え、1955年に生まれたわたしは、近い年齢の有名人が依然第一線で活躍されている事実に勇気づけられているのです。

ただし、今回の群氏の著書、「おやっ?」と小首をかしげる箇所がありました。

第11章「スマホ中高年」。

某日、氏が散歩をなさっていたら、

そこここに単独行動の中高年の男性や女性が立っていた。彼らはてんでんばらばらの方角を向きながらも、同じ体勢で立ち尽くしている。
(これはいったい、何?)
ぎょっとしていると、彼らはみなスマホを手にして、画面をじっと見つめていたのだった。(pp.104)

引用の光景を基点として、スマホに関する皮肉っぽい考察をなさったのち、

中高年たちが、同じ角度で手にしたスマホを見つめている姿は、異様にも思えた。
「ここに一人、反対側に一人、向こうにも一人……」
と数えていたら、私の視界の範囲には十人いた。彼らは一部の不真面目な若い人とは違い、歩きスマホはいけないとわかっているので、マナーを守ってきちんと立ち止まって、画面を凝視している。(pp.106)

こう了解されました。

うーん、おそらく違うでしょう。

街の人たちは「マナーを守ってきちんと立ち止まって」いたのではなく、

『ポケモンGO』

に興じていただけ、と考えられます。

当方も『ポケモンGO』とは無縁ですから、群氏がそれをご存じなかったことは理解できます。

文章発表にあたって、編集のかたが気づき、なんらかの指摘をすべきだったのではないでしょうか。

ひょっとすると、氏が文壇の大御所になっていらっしゃるせいで、編集者は口を挟みにくかったのかもしれませんが……。

『いかがなものか』自体は、大人の分別が漂う、落ち着いたエッセイ集でした。

とりわけ第5章「感嘆詞」に共感します。

金原俊輔

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