最近読んだ本606:『トルコ怪獣記』、高野秀行 著、河出文庫、2023年

「未知動物(pp.10)」のことを和製英語で「UMA(pp.10)」と呼びます。

本書は、ノンフィクション作家の高野氏(1966年生まれ)が、お仲間と一緒にトルコ東部のワン湖に潜むといわれている「ジャナワール(pp.12)」なる大型UMAの探索へ向かわれたお話。

探索は、トルコ人たちの、

「ジャナワール!?」フロントの二人は顔を見合わせ、次にブッと噴きだし、バンバンと古い木のテーブルを叩いて笑い転げた。(pp.46)

「日本から? ジャナワールを探しに? 本気で?」というとまた爆笑。(pp.71)

こうした嘲笑を浴びながらスタートしました。

ワン湖は(中略)琵琶湖の5倍以上もある巨大湖(後略)。(pp.78)

わが国の都道府県と比較してみると、だいたい奈良県または鳥取県の面積になります。

そして、そんなに広いワン湖へたどりつき、半信半疑で調査をおこないだした一行の前に姿をあらわしたものは……。

やや欲求不満がのこる結末でしたが、これは著者のせいではなく、良識ある人ならこういう書きかたをするしかなかっただろうと思われ、また、270ページに記載されていた信州大学名誉教授の解釈には説得力を感じました。

『トルコ怪獣記』はミステリーのような雰囲気を有し、ユーモラスで楽しい作品。

トルコの民族問題、トルコの怪しい民主主義、に関する知識も得られました。

ところで、わたし自身にUMAを見た体験などないものの、謎の大蛇には遭遇したことがあります。

高校時代、わたしと弟は飼い犬を連れて長崎市内の烽火山(ほうかざん、標高426メートル)に登りました。

中腹の山道を歩いていたとき、目の前に、道を横断するような格好で蛇が横たわっていたのです。

巨大な蛇で、わたしたちが立っていたところからは頭も尾も見えないほどの長さでした。

兄弟は恐怖・感動で身動きできず、しかし、われらが駄犬は蛇に気づかないままその近くをうろついていたため、わたしが呼び戻し抱え上げました。

大蛇はズルズルと前へ進み、やがて見えなくなりました。

日本に生息する最も大きい蛇はアオダイショウで、全長1~2メートルほど。

われわれがいた道は、幅がおよそ2メートルだったと記憶します。

それなのに蛇の胴体部分しか見えず、しかも丸太のように太い胴体でした。

あの蛇、おそらく長さが5メートルぐらいあったのではないでしょうか?

以降、烽火山に大蛇が出たという噂は全然聞きませんし、そもそも長崎に大蛇がいるはずもなく、高野氏のお言葉を借りれば「あれはいったい何だったのか?(pp.258)」と、いまだに不思議です。

金原俊輔