最近読んだ本627:『だからタイはおもしろい:暮らしてわかったタイ人の「素の顔」』、髙田胤臣 著、光文社新書、2023年
髙田氏(1977年生まれ)は20年以上タイ王国に滞在され、2024年現在、首都バンコクに住んでいらっしゃいます。
奥様はタイ人の由。
そういうタイのあれこれを知悉しているかたが、「微笑みの国(pp.12)」「日本人には暮らしやすい国(pp.12)」「親日(pp.106)」……われわれ日本人が漠然と抱いている同国への左記イメージを破壊するような本をお書きになりました。
どう破壊なさったか?
まず、微笑み関係を見てみましょう。
タイ人は公に見せる感情と、本心がまったく違うことがよくある。(pp.18)
あれだけ我々にやさしく微笑みかけてくれるタイ人なのに、実際にはそこにやさしさのかけらすらない。そこにあるのは、外国人だからという理由で特別扱いはしないといった感情なのだ。(中略)彼らの微笑みに特に意味はないのだ。(pp.19)
了解です。
つぎは、日本人の暮らしやすさについて。
タイは「政治の不安定(pp.13)」に加え「自然災害(pp.13)」や「爆弾テロ(pp.13)」も多発するうえ、
全体的に治安がよくない。(中略)在タイ日本大使館の邦人保護件数は09年まで17年間連続で世界中の日本大使館・領事館の中でワースト1位、10年から12年こそ2位・3位になったものの、それ以降も再びワースト1位になるほど、日本人がトラブルに遭い、大使館の保護を受けるケースが頻発している。(pp.14)
むかし亡妻とタイ旅行をした際、治安が良いと勘違いし、ふたりで呑気に夜半まで街なかを散策しました。
不用心だったかもしれません。
最後に、親日の件。
タイ人は合理的な気質もあって、あくまでも本質部分で国や身内に利益になる方を優先する。なにがなんでも日本、ということはまずない。(中略)「タイは親日国」というイメージは、ただ日本人が勝手に抱いているだけなのだ。(pp.107)
ご指摘を素直に受け止め、
日本人に対して尊敬する気持ちは少なくとも一般の人にはない。あくまでもタイ人には反日感情がないだけだ。(pp.177)
そうであるのならば、それで十分と思います。
以上、日本に関連した話題のみを選びましたが、『だからタイはおもしろい』では、このほか「シビアな人間関係の背後にある格差(pp.20)」「シンデレラストーリーは存在しない(pp.45)」「家族仲はよく見えるが その裏にある若者のストレス(pp.74)」「『王様』は平民に勝ち、貧民にも勝つ(pp.111)」等々、タイ特有の社会問題も論じられました。
「現役引退後はタイに移住しようかな」とチラッと考えたことがあるわたしにとって、たいそう参考になった読物です(本書のおかげで移住の計画は雲散霧消しました)。
金原俊輔