最近読んだ本338

『日本のアニメはなぜ世界を魅了し続けるのか:アニメ聖地と地方インバウンド論』、酒井亮著、ワニブックスPLUS新書、2020年。

日本のアニメの世界での存在感はそれほど大きくはない。アニメとしては、やはり米国のディズニーとマーヴェルが圧倒的で、100言語を超えるものもあるが、日本の作品で最高は『ドラゴンボール』の98言語(当時)だという。そして2015年にローランド・ベルガーが推計した数字では、日本アニメ産業の世界市場シェアは4%程度だという。(pp.207)

これって書名に矛盾する説明なのでは?

恥ずかしながら、引用の文章を読むまで、わたしは「日本アニメの人気や興行収益はディズニーに匹敵するレベル」と勘違いしていました。

世界全体のわずか4パーセント……。

いいです、「まだ伸びしろがある」と思うようにします。

さて、本書によれば、現時点で最も日本アニメの人気が高い国は、東洋では台湾、西洋ではフランス、とのことでした。

台湾では日本統治を肯定的に評価する気風がある。(中略)
それは特に30代以下の若い世代に強い。その若い世代は、中学生のころに、日本で勃興した深夜アニメにどっぷりとつかってきた。
そのため、台湾におけるアニメとマンガの浸透度合いと影響力は、世界で群を抜いている。(中略)
台湾におけるアニメ文化の浸透度は、場合によっては日本を超えるものがある。(pp.34)

欧州においては、アニメとマンガのファンが特に多いのはフランスである。アニメの放送契約も、フランスが欧州では群を抜いて多い。(中略)
フランスで有名なのは、前述したように、「Japan Expo(ジャパンエキスポ)」である。毎年7月上旬の木曜から日曜の4日間開催され、25万人前後を動員する欧州でも最大級のアニメイベントである。(pp.174)

嬉しい情報です。

『日本のアニメはなぜ~』は、著者(1966年生まれ)が世界のアニメ愛好者の傾向を検討したり、各国で開かれるアニメ・イベントに参加してその感想を述べたり、わが国の都道府県に点在する「アニメ聖地」の紹介をしたりと、盛りだくさんでした。

アニメ聖地とは「アニメの風景モデルとなったロケハン地、登場人物ゆかりの地、製作会社所在地など(pp.55)」を指し、ファンが聖地を訪ねることを「聖地巡礼(pp.54)」と呼びます。

わたしが住む長崎県にもいくつかの聖地があるみたいでした。

ゼロではなかったことに安堵。

ところで、酒井氏のご主張では、海外における「日本アニメ・ファン」の顕著な特徴は、

アニメに惹(ひ)かれることで日本語にも興味を持ち、親日家になってくれる割合が多いという点である。(pp.27)

アニメを理解したいから日本語を学び、他の日本文化にも興味を持ち、日本そのものを好きになる。(pp.28)

なのだそうです。

その結果、アニメ人気はインバウンド増加につながり得る、他のビジネス・チャンスだってあるだろう、氏は書中でたびたび左記叙述をなさいました。

このような話に至ると、以前、経済産業省が推進した「クールジャパン戦略」の件を想起しないではいられません。

著者が示した同戦略の「失敗(pp.247)」に対する分析、要するに政府が関与せず民間に任せておけば良かったのにという分析は、おそらく妥当でしょう。

金原俊輔

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