最近読んだ本348

『マックス・ウェーバー:近代と格闘した思想家』、野口雅弘著、中公新書、2020年。

マックス・ウェーバー(1864~1920)は、ドイツの社会学者および経済学者でした。

彼が生きた時代をイメージするために記せば、日本の明治時代から大正時代にかけて活躍した文豪・夏目漱石(1867~1916)と、おおむね同じころの人物。

マックス・ヴェーバー著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』、岩波文庫(1989年)

を執筆したことで知られています。

わたし自身は、上記『プロテスタンティズムの倫理~』そして、

マックス・ウェーバー著『職業としての学問』、岩波文庫(1936年)

の2冊に目を通しました。

関連文献は、

大塚久雄著『社会科学の方法:ヴェーバーとマルクス』、岩波新書(1966年)

長部日出雄著『二十世紀を見抜いた男:マックス・ヴェーバー物語』、新潮文庫(2000年)

を読んでいます。

彼にいくぶん興味をもっているものの、思想や学説を理解するための真摯な努力は怠ってきました。

反省のうえ、今回、野口氏(1969年生まれ)による評伝を購入したのです。

読後感を述べると、この本はウェーバーの人生を総覧しつつ、著作・業績もきちんと解説している、堅牢な内容でした。

マックス・ウェーバーは偉大な思想家だったと思います。

偉大なせいか、

ウェーバーのテクストの編纂やクリティークについての研究が最も豊富なのは、折原浩をはじめとする日本での研究蓄積である。その意味で日本のウェーバー研究の水準は概して高い。しかし別の言い方をすれば、ドイツやアメリカなどの研究者は、ハイデルベルグ大学のヴォルフガング・シュルフターなどの一部の専門家を除いて、「ウェーバー学」を専門に研究しているわけではない。(pp.142)

日本においては哲学の世界でも同様の傾向があるみたいですし、わたしが学ぶ心理学ではカール・ロジャーズ(1902~1987)の人気と本人研究が出身国アメリカを上回っています。

心理学の話をしましたが、わたしが知るかぎり、ウェーバーは心理学に特段の影響をあたえていません。

『マックス・ウェーバー』書中、カール・ポパー(pp.64)だの、ウォルター・リップマン(pp.112)だの、デイヴィッド・リースマン(pp.167)だの、さらにはタルコット・パーソンズ(pp.226)だのと、心理学界で重要視されている学者たちの名前が登場したのは、わたしにとり「邂逅」でした。

正真正銘の心理学者エーリッヒ・フロム(pp.82)も。

ジークムント・フロイト(1856~1939)の『夢判断』が刊行されたのは1900年のことだった。1918年の夏学期に、ウェーバーはウィーン大学で講義を担当した。この際によく葉巻を吸い、ビールを飲んでいたのが「銀の泉」だった。この宿屋兼レストランはベルクガッセ5番にあったが、この同じ通りの19番がフロイトの診療所だった。(pp.59)

こういう大物同士の「ニアミス」すら紹介されています。

最後に、しばしば2020年の「新型コロナウイルス」と対比される「スペイン風邪」。

1918年から1919年に大流行し、世界で数千万人の犠牲者を出した。いわゆるパンデミックである。(pp.215)

ウェーバーはスペイン風邪に罹患したのち亡くなったそうで、現代人としては身近に感じられます。

蛇足ながら、本書では何となく野口氏の「独り言」的な文章がつづき、読者への親切味がやや不足しているような気がしたのですが、もしかしたら、これはわたしだけが受けた印象であるのかもしれません。

金原俊輔

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