メンタルヘルス情報3:ストレスチェックにおける高ストレス判定

ストレスチェックの個人結果通知書に「あなたは『高ストレス』の状態です」という文言が入っている場合があります。

この「高ストレス」はどうやって判定されるのか?

ご説明しましょう。

まず、ストレスチェック制度は、厚生労働省の推奨により、受検者のおおむね10パーセントが高ストレス者として判定される仕組みになっています(事業場の事情に合わせ、割合はかならずしも「10パーセント」でなくてかまいません)。

弊社のストレスチェックも「10パーセント」で実施しています。

高ストレス者数が10パーセントを超えた事業場は「ストレスが高め」、10パーセントを下回った事業場は「ストレスが低め」、ということになります。

そして今回の本題ですが、回答者が高ストレスであるか否かを判定する方法には「評価基準の例・その1」「評価基準の例・その2」のふたつが準備されています。

上記「その1」は、ストレスチェックの回答で得られた数値を単純に合計する方法。

「その2」は、ストレスチェック結果の分析にあたって「素点換算表」という表を用いる、複雑な方法です。

一般に、「その1」は「医師の面接指導が必要な回答者を抽出するのに不向き」といわれています。

「その2」のほうは「種々の検査項目の関連が反映され、網羅的である」と、いくぶん高評価。

ある論文(*)によれば、

1 「その1」では、身体愁訴をかかえている回答者が、そうでない回答者よりも、高ストレスと判定されがち

2 「その2」では、「その1」より約1.5パーセント、高ストレスと判定される人が増える

……とのことでした。

つまり「その1」と「その2」は、いまのところ均等な(おなじ検査結果にいたる)方法とはいえないわけです。

どちらのほうが優れているかについても、判断するためには今後の学術研究を待たなければなりません。

なお、弊社がおこなうストレスチェックでは「その2」を採用しています。

* 片岡葵、菊池宏幸、小田切優子、大谷由美子、中西久、下光輝一、井上茂(2021年)「ストレスチェック制度における2つの高ストレス者判定方法の比較」、日本産業衛生学会『産業衛生学雑誌』63巻2号

金原俊輔

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