メンタルヘルス情報8:ストレスチェックと衛生委員会

ストレスチェックに関しては、事業場の「衛生委員会」が調査審議をおこなうこととなっています。

まず、衛生委員会について説明しておくと、従業員数50名以上の事業場は、「労働安全衛生法」にて衛生委員会の設置が義務づけられています。

ストレスチェックも、従業員数50名以上の事業場では、おなじく実施が義務化。

つまり、ストレスチェック実施が義務である事業場には、かならず衛生委員会が設けられている、ということになるのです。

衛生委員会では、事業者(例:社長・所長・院長など)が指名した従業員が、議長になります。

そして、「衛生管理者」「衛生に関して経験を有する従業員」「産業医」などのかたがたが委員となります。

もし事業場に「作業環境測定士」の有資格者がおられるときは、その人物を衛生委員に加えることが推奨されています。

議長を別にして、衛生委員会委員の半数は、全従業員の過半数で組織された労働組合の推薦にもとづき、任命されなければなりません。

労働組合がない事業場の場合は、委員の半数が、全従業員の過半数を代表する従業員の推薦にもとづいて、任命される必要があります。

さて、衛生委員会は毎月1回以上の開催で、さまざまな審議をいたしますが、ストレスチェックに限定して活動内容をまとめると、

〇ストレスチェック制度やストレスチェック実施目的の事業場内への周知

〇ストレスチェック実施体制の構築

〇ストレスチェック実施方法の策定

〇ストレスチェックで得られた結果の集計・分析

〇ストレスチェックで得られた情報の取り扱い規程の策定

〇ストレスチェック受検結果記録の保存方法の策定

……などが主なものです。

ここまでの文章は、どれもが法律で定められている事柄のご紹介でした。

以下では、ストレスチェックと衛生委員会について、わたしが個人的に有している考えを述べます。

第一です。

事業場によっては、衛生委員会と(労働災害などの事案に対処する)「安全委員会」とを統合し、「安全衛生委員会」としているところが少なくありません。

これは法的に認められているため問題はないものの、ふたつの委員会を統合させると、審議すべき議題が増え、たとえば「ストレスチェック結果」というひとつの議題をじっくり話し合う時間を取りがたくなってしまいます。

できれば、衛生委員会と安全委員会とを分け、個々の審議にじゅうぶんな時間をつかえるようになさってはいかがか、と思います。

あるいは、安全衛生委員会に「ストレスチェック専門部会」的な下部組織を設け、その専門部会でストレスチェック結果を精査していただくのも良いかもしれません。

第二。

衛生委員会の委員として、事業場にご勤務される「産業保健師」「産業看護師」の皆さまを含むことが大切です。

産業保健師・産業看護師は専門知識をおもちですから、委員として参加していただくと、衛生委員会のお力になられるのが自明です。

第三。

衛生委員会では、全委員が事業場のストレスチェック結果を共有したのち、「職場環境改善」につなげていただきたい、と希望します。

たしかな職場環境改善実現のために、ストレスチェックの全体結果および集団分析結果を細かく読み込み、理解し、また、過去数年分の結果と比較なさったりもして、すでにどのような改善がなされたのか、これから何を改善してゆけば良いのか、等々が審議されるべきなのです。

毎年の受検者数や受検率の変動も、改善点を浮かびあがらせるツールとして用いられ得るでしょう。

第四。

衛生委員会が、場合に応じ、過去よりも大きくストレスが高まったり大きくストレスが軽減したりした部署あるいは支店の長を招き、ヒアリングや意見交換をおこなって、現場の実態に関与する取り組みも必要ではないでしょうか?

最後です。

わたしは、衛生委員会発の情報として、事業場の全従業員に、ストレスチェック全体結果をお伝えすることも大事、と考えます。

従業員たちは、やはり、ご自分のお勤め先のストレス状況をお知りになりたいはずですので。

金原俊輔

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