メンタルヘルス情報11:適度なストレスの必要性
現代社会では「ストレスはよろしくない」と受け止められています。
じつは、それは必ずしも正しくありません。
ご説明します。
1908年、アメリカ合衆国の心理学者ロバート・ヤーキーズおよびジョン・D・ドットソンが、法則を提唱しました。
「ヤーキーズ・ドットソンの法則」と呼ばれます。
内容は、
〇 人間は適度なストレスを受けると作業能率が高まる
〇 ストレスが強すぎれば能率は落ちてしまう
〇 ストレスが弱すぎても能率に悪影響をあたえる
……というものです。
自分たちの日常を振り返っても納得がゆく法則でしょう。
たとえば、ある仕事の締め切りが妥当な時期に設定されている場合、これは問題ないストレスですから、われわれはその締め切りを遵守すべく頑張るはず。
いっぽう、締め切りが極端に近いと、人は重いストレスを感じてあせり、あせったせいで仕事が捗らず、ミスも多発させがちです。
締め切りが設けられていない仕事では、取りかかろうとすらしない可能性がありますし、取りかかってもダラダラした作業の進めかたになってしまうかもしれません。
以上は、締め切りばかりでなく、業務量、ノルマ、完成度への注文、上司や先輩からの注意、接遇、職場の物理的環境、等々、いろいろな事項に当てはまります。
どうしてこうなるのか?
ヤーキーズ・ドットソンの法則には「自律神経」が関与しています。
人の体内とくに内臓は自律神経によって調整されており、自律神経は「交感神経」と「副交感神経」に分けられます。
自動車の比喩を用いれば、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキ、の役割を担当。
交感神経(アクセル役)が働きだすと心身は興奮状態にいたり、副交感神経(ブレーキ役)が働くと心身はゆるみます。
そして、われわれがストレスを受けた際には、交感神経(アクセル)のほうが活発化するのです。
血圧が上昇し、心拍数が増え、集中力も向上します。
上記はけっして悪い動きではなく、一般に、人が能率を高めようとする際はこうした態勢になることが必要です。
そこで、適度なストレスは大事、と言えるわけです。
強すぎるストレスを受けて交感神経(アクセル)を作動させつづけなければならないとか、ストレスが弱いため副交感神経(ブレーキ)を作動させっぱなしとかというのは、適度でないストレスが関わっている状況であるため、能率という観点からは望ましくありません。
金原俊輔