メンタルヘルス情報15:新型うつ病
新型うつ病とは、うつ病の症状を示すけれども、それは主に職場においてであり、自宅などの職場外では症状があまりあらわれない、状態のことです。
特徴として、
- 夕方以降の不調が顕著
- 他責的、つまり周囲の人々を責める傾向がある
- 過食や過眠を示す
……などがあげられます。
従来の、一般的なうつ病でしたら、
- 朝方に最も気分が落ち込む
- 自分自身を責めがち
- 食欲が落ちたり不眠症になったりする
……ことが多いので、ほとんど正反対と言ってよいでしょう。
そのため修飾語「新型」が用いられました。
ただし、新型うつ病はメディアがつくりだした言葉であり、精神医学・臨床心理学の専門用語ではありません。
専門的には「非定型うつ病」と呼びます。
ここで新型うつ病であるかどうかを確認するチェックリストを紹介いたします(*)。
- 若い女性である
- 普段は憂うつで、気分が落ち込み、集中力の低下などがみられるが、自分の興味のある趣味や好きなことをするときは一時的に気分がよくなる
- 1日のうちで、夕方から夜にかけて不安やイライラが高まって、気持ちが不安定になり、気分が沈む
- 1日10時間近く眠ることが、1週間のうち3日以上ある
- 過食・むちゃ食いをして、体重が増加傾向にある
- 身体に鉛が入ったかのように重く、ダルい
- イライラして気分が落ち着かず、いろいろなことに手がつかない
- イライラからくる激しい感情を他人に向けてしまい、人間関係が悪くなっている
- 自分が人にどう見られているかが気になり、ついつい顔色をうかがってしまう
- 幼少時から「よい子」とか「優等生」と言われてきた
以上です。
このうち、いくつか当てはまる項目があった場合に新型うつ病の可能性が想定され、5項目以上が当てはまった場合はおおむね新型うつ病であると見なすことができます。
「新型うつ病かもしれない」と感じたときは、勤務先の保健師のかたや最寄りの心療内科の先生に相談なさるのが適切です。
カウンセリング法としては、行動療法、認知行動療法、森田療法、が考えられます。
行動療法では「シェイピング」法が適用されるでしょう。
本人にとってのストレス源を特定し(たとえば業務量)、まずはそのストレスを弱めたうえで(たとえば業務量を4分の1に減らしたうえで)、徐々にストレス強度を高めてゆき(徐々に業務量を増やしてゆき)、最終的には元と同じストレス状態(元の業務量)に戻すやりかたです。
認知行動療法でしたら「マインドフルネス」が試行されるかもしれません。
マインドフルネスは、自分の「いま、この瞬間の気もち」を静かに知覚し、それをあれこれ評価したりせず、ただ受け入れる、そういう一種の瞑想法です。
森田療法では、調子の良し悪しにかかわりなく果たさねばならない仕事を果たす、という「目的本位」が助言されるはず。
少々調子が悪くても仕事を休まない、出勤して働く、遅刻や早退をしない、業務中に手を抜かない、ことが推奨されるわけです。
上記3技法は、すべて効果が実証されています。
(*)このチェックリストは、わたしが以前、インターネットで「うつ病セルフヘルプ」なるグループのホームページを閲覧し、同グループが作成した「新型うつ病チェックリスト」http://utsu-help.com/utsu-check34-884.html を見出して、そのまま引用したものです。
しかし、2023年現在、当該ホームページはなくなっています。
金原俊輔