最近読んだ本570:『嫌われ者リーダーの栄光』、鹿島茂 著、日経ビジネス人文庫、2023年

わたしは鹿島氏(1949年生まれ)のお名前を、

鹿島茂、福田和也、松原隆一郎 著『読んだ、飲んだ、論じた:鼎談書評二十三夜』、飛鳥新社(2005年)

鹿島茂、福田和也、松原隆一郎 著『本日の論点・1』、飛鳥新社(2006年)

上記2冊の鼎談本をとおして脳裏に刻みました。

氏のご発言で推し量ることができる(自分などが逆立ちしてもかなわない)教養人でいらっしゃるご様子に打ちのめされたのです。

フランス文学がご専門の、元・明治大学教授。

先日、書店回遊をしていた折『嫌われ者リーダーの栄光』に気づき、「どうせまた圧倒されるんだろうな」と思いつつ購入したのち、読みだすや、案の定圧倒されました。

本書は「国内外の歴史に目を転じて(中略)ひどい『嫌われ者』にはなったが、後に、歴史がその決断の正しさを証明するに至った『真の偉人』(pp.8)」である、

シャルル・ド・ゴール(1890~1970)、フランス

ジョルジュ=ウージェーヌ・オスマン(1809~1891)、フランス

アルマン=ジャン・デュ・プレシ・ド・リシュリュー(1585~1642)、フランス

蔣経国(1910~1988)、台湾

徳川慶喜(1837~1913)、日本

……5名の政治家たちを対象とした評伝です。

このうち、わたしはオスマンとリシュリューを全然知りませんでした。

台湾に関する本を多く読んできたため蒋経国については若干知識があり、徳川慶喜はいろいろな歴史小説で足跡をたどっています。

そして、最もなつかしく思ったのは、ド・ゴールでした。

子どもだったころ、よくテレビのニュースキャスターが「フランスのド・ゴール大統領~」といった言葉を発していましたので。

彼が母国で嫌われていたとは存じませんでしたし、『嫌われ者リーダーの栄光』を読了してもフランス国民に嫌われていたようには感じられません。

イギリスやアメリカ合衆国からは嫌われていたらしく、そういう意味では本書に登場する資格があるでしょう。

さて、フランスは昔、アフリカのアルジェリアを植民地化していました。

少数派がアルジェリア民族解放戦線(FLN)を結成。1954年10月30日の夜から翌朝にかけて、闘士数百人が一斉に蜂起し、各地の警察署やコロンの屋敷を襲撃した。以後、足掛け8年にわたって続くアルジェリア戦争の勃発である。(pp.57)

1959年、

フランスは、ド・ゴールの決断によって大きくアルジェリア独立の方向に舵を切った(後略)。(pp.69)

1962年(中略)7月3日、7月1日に実施されたアルジェリアでの国民投票を受けてエヴィアン協定が承認され、アルジェリアの独立が決まった。4日、アルジェ総督府から三色旗が降ろされ、ここに約130年に及ぶフランスの支配は終止符を打ったのである。(pp.74)

死後、名声は上がる一方で、今日では、アルジェリア戦争のさいにド・ゴールに対抗すべく『エクスプレス』を発刊したフランソワーズ・ジル―のような元進歩派も(中略)フランスが今日あるのはド・ゴールのおかげであると公然と認め(後略)。(pp.78)

ド・ゴールはアルジェリア戦争以外でもフランスに尊厳と国益をもたらした救国的リーダーだったみたいです。

貴重な知識を得る読書になりました。

ところで、『嫌われ者~』は「西洋や日本の歴史上の人物に題材を取ったビジネス書(pp.420)」として企画され執筆されたものだそうで、そのせいか、言わずもがなのビジネス処世訓が書中あちこちで語られ、わたしは少し鼻白みました。

金原俊輔