最近読んだ本584:『編集者の読書論:面白い本の見つけ方、教えます』、駒井稔 著、光文社新書、2023年
現役の雑誌編集者でいらっしゃる駒井氏(1956年生まれ)が、編集者として堪能し、そして職業的な影響をお受けになられた、国内外の書籍多数を紹介した一冊。
書籍紹介だけでなく、著名人たちによる読書論も紹介されています。
たとえば、毛沢東、サマセット・モーム、ヘンリー・ミラー、ヘルマン・ヘッセが、生前、本に親しむことをどれほど重んじていたかを、供覧してくださいました。
書籍紹介や読書論紹介だけでなく、世界各地の書店や図書館も語られており、語られたなかで、台湾の「誠品書店(pp.183)」、フランスの「シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店(pp.192)」の評判は、わたし自身耳にした記憶があります。
わけても当方、後者に関する駒井氏の生き生きした文章に興味をそそられました。
シルビア・ビーチ 著『シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店』、河出書房新社(1974年)
という、書店の店主だった女性が筆を執った自伝がある由ですので、いつか読んでみようと思います。
本書『編集者の読書論』をとおし、わたしは書物にまつわる異聞を満喫させていただきました。
感謝です。
ところで、駒井氏は、第5章「自伝文学の読書論」と第6章「児童文学のすすめ」において、トム・ソーヤーおよびピノッキオに言及。
ピノッキオといえば(中略)イタリアの子どもたちの絶大な支持を集めた(後略)。(pp.320)。
これで気づいたのですが、各国は自国の文化内に、ある種、その国の若年層を表象するような、天真爛漫ないたずら者を有しています。
アメリカのトム・ソーヤーまたはハックルベリー・フィン、カナダなら(赤毛の)アン、イタリアにはピノッキオ、イギリスにピーター・パン、フランスだとプチ・二コラ、スイスのハイジ、スウェーデンはピッピやカッレ……が、該当するキャラといえるでしょう。
このとき、わが国においては、思い浮かぶ同様の存在がいません。
金太郎だの桃太郎だの一休さんだのは時代が古すぎて現代社会の子どもたちにそぐわず、夏目漱石の坊っちゃんは少年ではなく社会人でした。
となれば、わたしは日本代表として磯野カツオ、彼に白羽の矢を立てます。
カツオだったら、トム・ソーヤーともカッレとも互角に渡り合えるでしょうから。
金原俊輔