最近読んだ本619:『宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019』、宮部みゆき 著、中公新書ラクレ、2023年

書評ってどうしてこうおもしろいのでしょうか?

わたしは宮部氏(1960年生まれ)を存じあげていなかったのですが、上掲書をひらくやグイグイ引き込まれ、あっというまに最終ページへ到達しました。

氏はミステリー小説家なのだそうです。

以前も述べた件ながら、小説家が執筆した書評は影響力を有し、読んだ側に抑止しがたい興味が生じがちで、当方は今回もそのような反応にいたりました。 「最近読んだ本249」

本書は、私が毎週日曜日に読売新聞朝刊に掲載される書評欄「本よみうり堂」に書いた書評を集めたものです。(pp.3)

計128冊が語られており、それらは、

刊行から10年以内の本ばかりですので、古本屋さんや図書館では、さほど苦労せずに見つけていただけるだろうと思います。(pp.4)

読者にとって入手するのが困難ではない図書群を優先なさった由です。

書中、わたしがすでに目をとおした本も結構含まれていて、この「最近読んだ本」コラムで取りあげた作品との重複すら散見されました。

ちょいと嬉しい……。

ただし、当コラムで取りあげたことがあるとはいっても、宮部氏はわたしなどより遥かに読み巧者でいらっしゃるうえ、評する文章も的確、「やはりプロはすごい」と痛感させられます。

氏の論評がお見事だった結果、「ぜひ読んでみたい」と思った書籍に多数遭遇したのですが、あえてその中から最良5冊を選ぶと、

ロジャー・モーティマー、チャーリー・モーティマー 著『定職をもたない息子への手紙』、ポプラ社(2015年)

メアリー・メイプス 著『大統領の疑惑』、キノブックス(2016年)

ジョン・W・ダワー 著『アメリカ 暴力の世紀』、岩波書店(2017年)

日経トップリーダー 編『なぜ倒産:23社の破綻に学ぶ失敗の法則』、日経BP社(2018年)

仁科邦男 著『「生類憐みの令」の真実』、草思社文庫(2019年)

……どれもが題材となった世界に没入する数日間をわたしに提供してくれそうでした。

いっぽう、宮部氏による評価は高かったものの、たいして読む気が起こらなかったのは、

トラヴィス・スミス 著『アメコミヒーローの倫理学:10人のスーパーヒーローによる世界を救う10の方法』、PARCO出版(2019年)

個人的にアメコミヒーローへの関心がまったくないためです。

それでも宮部氏の惜しみない賛辞に少し心が動かされました。

書評がおもしろいのは、評者側が(おそらくご自分の著書もそうしてほしいように)芸を尽くして対象本を論じてくださるからなのかもしれません。

金原俊輔