最近読んだ本665:『2028年 街から書店が消える日』、小島俊一 著、プレジデント社、2024年

読書愛好家たちは、書籍類が売れなくなっている昨今、地元の本屋さんがすべて姿を消してしまうのではないかという不安を抱えています。

わたしもそのひとり。

とはいえ、わずか4年後に不安が現実化する可能性は予想していませんでした。

上掲書のタイトルによれば、そうなってしまうらしいです。

小島氏(1957年生まれ)は、出版物取次の大手・株式会社トーハンにお勤めになられたのち、赤字だった書店の再建に辣腕(らつわん)をふるわれ、現在は経営コンサルタントとしてご活躍中。

氏が出版業界各領域に身を置く29名の皆さまにインタビューをなさり、業界の構造的問題の指摘や再生のための提案を聞き出されて、それら指摘・提案をまとめたものが本書です。

小島氏も小島氏と話し合われたどの人物も、業界を愛し、業界の存続を真剣に模索していらっしゃることがぐいぐい伝わってくる内容でした。

しかし……。

この本、小島氏ご自身の著書の宣伝がくどく、読点(とうてん)の用法が不正確で、誤字脱字も見られるなど、当方、なかなか本来のテーマに入り込めませんでした。

説明しましょう。

まず、自著の宣伝についてですが、その本を「読めば書いてある(P. 112)」というご発言がいったい何度繰り返されたことか。

わたしは食傷しました。

つづいて、読点の打ちかたが良くないと感じた例を示します。

2014年には、その昔には森鷗外も通ったという一時期休業していた、『長崎次郎書店』を復興させるなどもしているんだ。(P. 91)

「2014年には、その昔には森鷗外も通ったという、一時期休業していた『長崎次郎書店』を~」とすべきでした。

売り上げは、下がるが固定経費は変わらないか上昇する状態が続く中に(後略)。(P. 130)

これは「売り上げは下がるが、固定経費は変わらないか上昇する状態が続く中に」のほうが妥当。

月商は1千数百万円ありましたが、数年後のその店が閉店する時の月商は、1千万円を大きく下回るまでに下がっていました。(P. 143)

「月商は1千数百万円ありましたが、数年後のその店が閉店する時の月商は1千万円を大きく下回るまでに~」が読みやすいのでは?

最後に、誤字脱字につきまして。

「雑誌発売日協定を守ろうとする人は『角(つの)を矯(た)牛を殺す』人たちなんだね。(P. 134)

「角(つの)を矯(た)めて牛を殺す」です。

堀内さんは(中略)少年ジャンプをはじめとする集英社の綺羅星(きらぼし)の如き各漫画編集部で活躍し、(後略)。(P. 237)

大間違いとまでは言えないにせよ、「綺羅星(きら、ほし)の如き」が最も正しい読みであり、しかも、この言葉は複数の人間に対して使われる形容詞句ですから、「編集部」の前に置くのはおかしいのではないでしょうか?

以上が気になりました。

本書のテーマ自体に関して私見を申しますと、「第4話」にあった「大手4社(講談社・小学館・集英社・KADOKAWA)(P. 42)」という記述で想起したことなのですが、大手4社はどれもマンガ本を発刊しており、おそらくマンガは今や唯一売れる書物と言えるはずで、だから経営が安定しているのかもしれません。

そこで、マンガにいっそう力を注いで国内における売り上げを高め、輸出量も増やし、それによって出版業界全体を潤(うるお)わせ、次なるは他の分野の強化、という「一点突破、全面展開」的な戦略が考えられます。

まあ、誰だって思いつくアイデアでしょうけれども……。

金原俊輔